「とりあえずやってみる」は絶対NG...幹部や先輩からの「的外れ」アドバイスの正しい対処法
ここで有効になるのが、「難易度×コスト」「成果が出るまでの時間×成果の大小」といったような、ある一定の軸のマトリクスで考えること。この軸の文言は、「コスト」でも「工数」でも「心理的ハードル」でも何でも構いません。
たとえば、新規の営業先が足りなくて困っているとします。すると、隣の課の課長が「紹介をもらうためには、お客様とゴルフに行ったり、飲みに行ったり、いかに時間をともにするかが重要だよ」とアドバイスしてくれました。
しかし、あなたは今、SNSを使ったマーケティングに取り組んでいて、ゴルフや飲み会に参加している時間はありません。
ここで効いてくるのは、「成果が出るまでの時間」という評価軸です。アドバイスをもらったら、「そうですよね。それって、アクションしてからどのぐらいのスパンで変化出ますかね? このマトリクスだとどのぐらいの位置になります?」と聞いてみてください。「そりゃ、すぐにってわけにはいかないよ」と返ってくるでしょう。
そこで、「積み重ねですよね。ありがとうございます。実は今、こういう施策を考えていまして......」と切り返すのです。
その時、成果が出るまでのタイムラグや難易度、コストを軸に、マトリクスへプロットして見せてみてください。アクションの有効性を視覚的に捉えることができ、説得力が増します。
視覚的に情報を整理することで、「今、実はそんなに予算ないんですよ」「うちの部署でこんなアクションに取り組んでいて、そこに時間とお金を使っているんです」と、自分たちの状況も伝えることができます。
そして、もらったアドバイスに対しても、全体から見た位置付けを俯瞰でき、その有効性(あるいは無効性)が明確になります。
「今取り組んでいるこの施策が終わったタイミングで、もう一度相談させていただいてもいいですか?」という形で尋ねれば、その上司の顔も立てることができます。
上司や先輩からのアドバイスだからといって、すぐに手をつけなければならないわけではありません。そんなことをしていたら、すぐにパンクしてしまいます。
だからといって、「あれ、どうなった?」と尋ねられた時に、「まだ手をつけていません」ばかりではいけません。アドバイスをただ無視していると、上司はその後、さじを投げるでしょうし、あなたに有益な情報をくれることもなくなるでしょう。
現状の取り組みをマッピングし、目に見える形で状況を伝えることで、一方的なアドバイスではなく、さまざまな条件を考慮したアドバイスをもらえるようになります。
中谷一郎
大学卒業後、ベンチャー・リンク社を経て2010年にトリノ・ガーデンを設立。サービス業を中心に、建設、小売、メーカーなど幅広い業界における大企業の収益・生産性改善を、「オペレーション分析」を通じて実現してきた。その手法の特徴は、徹底的に現場の様子を「可視化し計測し記録する」こと。近著に『オペレーション科学』(柴田書店)がある。
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