FRB「次の一手」、物価高止まりと大統領選接近で難しさ増すタイミング
米連邦準備理事会(FRB)は30日―5月1日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を5.25―5.50%に据え置くと予想されている。写真はワシントンのFRB。2012年4月撮影(2024年 ロイター/Joshua Roberts)
米連邦準備理事会(FRB)は30日―5月1日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を5.25―5.50%に据え置くと予想されている。その後公表される声明文には物価上昇率が「依然高止まりしている」との表現が残されるかもしれない。
昨年を通じて着実に鈍化してきた物価上昇率は今年1―3月に再び加速。当面インフレが落ち着く兆しが見えない一方、次第に大統領選が近づいてくる中で、FRBとしては「次の一手」に動くタイミングは難しさが増してきている。
直近の物価指標を詳しく見ると、モノとサービス双方で幅広く物価高が続いている様子が分かる。この点こそ、アトランタ地区連銀のボスティック総裁やリッチモンド地区連銀のバーキン総裁らが利下げに慎重な姿勢を打ち出している理由だ。
例えば26日に発表された3月の個人消費支出(PCE)物価指数は、構成品目の半数余りの前年比上昇率が3%超と、新型コロナウイルスのパンデミック前の状態を大きく上回っている。
3月PCE物価指数の前年比上昇率は2.7%と2月の2.5%から上振れ。変動の大きい食品とエネルギーを除くコアは2.8%で2月と同じ伸びだった。これを受け、シティのグローバルチーフエコノミスト、ネーサン・シーツ氏は「FRBはまさに堅固な壁に突き当たっている。これは非常に強いデータで、(目標の)2%に向かっているとの自信を与えるデータではない。FRBとしてはただひたすら待つしかない」とコメントした。
<注目は議長会見>
多くの市場関係者の間では、物価上昇率が向こう1年で減速し、最終的にFRBは第1・四半期の動きを一時的な上振れとみなして利下げの準備を進められる、との見通しがなお有力だ。
ただそのプロセスはゆっくりしか進まない恐れがあり、投資家は既に利下げ開始時期の予想を9月まで先送りしている。
こうした中で開かれる今回のFOMCは経済物価見通しの改定を伴わないので、この先の政策運営姿勢を探る手がかりが出てくるとすれば、パウエル議長の会見になるだろう。
3月に公表された直近見通しで示されたFOMCメンバーが想定する年内の利下げは計3回で幅は75ベーシスポイント(bp)だったが、パウエル氏の最近の発言でこの想定が揺らいできたことが示唆されている。
パウエル氏は16日、足元のデータからはインフレが再び鈍化するとの自信を必ずしも深められず、現段階では労働市場の強さや物価情勢を踏まえれば、もう少し長く引き締め的な政策を続けて、データや先行きの事態がどう変わるのかを見定めるのが適切だとの見解を明らかにした。
JPモルガンのエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は、5月1日のパウエル氏の会見でも全体としてこのメッセージが繰り返されそうだと予想。「声明文は前回3月とほぼ変わらないが、パウエル氏はFRBが必要な期間目一杯まで利下げを遅らせ、同時にデータで正当化されれば速やかに利下げする用意があると改めて強調する公算が大きい」と記した。
<政治との距離>
6月に公表される次の見通しでは、パウエル氏は3月時点の政策金利経路の想定を維持しない、というのがフェロリ氏の見方だ。
実際投資家は、もはや年内の利下げは9月の1回にとどまるとみている。
ところが、結局物価情勢が急速に改善せず、9月に利下げを迫られる事態は、FRBにとって鬼門になりかねない。特に大統領選で共和党候補指名が確実なトランプ前大統領が、自分の政権下で利上げを続けたパウエル氏を敵視しているだけに、FRBが望まない政治論争に巻き込まれる可能性があるからだ。
元FRB金融政策局長でドレイファス・アンド・メロンのチーフエコノミストを務めるビンセント・ラインハート氏は、たとえ政策判断がデータを根拠にしていて非政治的であったとして、FRBが秋の大統領選前後に重要な決定を下すのは避けるのが適切ではないかと提言している。
5月以降のFOMCは6月と7月、9月、11月の大統領選直後、12月に開催される予定。ラインハート氏は、政治から独立しているというFRBの評価を守りたいなら6月と12月が政策決定に最も安全な時期だと指摘。FRBとしては6月に動きたいようだが、データがそれを許してくれないと付け加えた。
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