最新記事
中国不動産

中国恒大に清算命令、オフショア債務巡り香港高裁 本土市場に影響も

2024年1月30日(火)11時08分
ロイター

1月29日、香港の裁判所は、中国不動産開発大手、中国恒大集団の清算を命じた。写真は深センで2021年9月撮影(2024 ロイター/Aly Song)

香港の高等法院(高裁)は29日、中国不動産開発大手、中国恒大集団の清算を命じた。既に低迷する中国の金融市場に動揺が広がる可能性がある。

3000億ドル超の負債を抱える中国恒大は2021年にデフォルト(債務不履行)に陥り、中国の不動産不況が深刻化。

同社は約2年にわたり230億ドルのオフショア債務再編計画について債権者団と協議してきたが、当初の計画は昨年9月、創業者の許家印氏が犯罪に関与した疑いで拘束されたことを受けて頓挫していた。

香港の投資会社トップ・シャインは22年6月に恒大の清算を申し立てた。保有する恒大子会社の株式について、恒大が買い戻す約束を果たさなかったとしていた。

高裁の陳静芬(リンダ・チャン)裁判官は午前の公判で、恒大が1年半以上にもわたり十分な意思疎通や解決策を示さなかったと指摘し清算を命じた。その後、アルバレス・アンド・マーサル(A&M)を清算人を選任した。

A&Mのマネジングディレクター、ティファニー・ウォン氏は「可能な限り多くの事業を保持して再編し、事業可能な状態に保つことが優先事項だ。債権者をはじめ各ステークホルダーに価値を保全・還元するため体系的なアプローチを取っていく」と述べた。

清算命令を受け、香港取引所は恒大とその上場子会社の株式を取引停止にした。停止前に恒大株は一時20%急落していた。

恒大の肖恩最高経営責任者(CEO)は中国メディアに対し、清算命令にかかわらず住宅建設プロジェクトを確実に実行すると表明。また、中国本土および本土以外の子会社の事業運営に影響しないとした。

<今後さらに曲折も>

清算審理は何度も延期されており、陳裁判官は12月の審理に際し、具体的な再編計画がないとして、次回に清算命令を出すか決定すると予告していた。

恒大は29日も審理延期を申し立てた。弁護士によると、債務再編案で「一定の進歩」があったためという。最新案は債務を同社が所有する香港子会社2社の株式全てと交換する内容。従来は香港子会社株の約30%を交換対象にするとしていた。

清算手続きは、多数の当局が関与していることから政治的要因が絡み複雑になる可能性がある。

ただ、住宅建設を含む恒大の事業には短期的にほとんど影響しないとみられる。債権者が選任するオフショアの清算人が、香港と管轄当局が異なる中国本土の子会社を管理下に置くまでには数カ月か数年を要する可能性がある。

オリエント・キャピタル・リサーチ(香港)のマネジングディレクター、アンドリュー・コリアー氏は「中国恒大集団の清算は、中国が不動産バブルの克服で強硬手段に出る意思があることを示している。長期的には中国経済にプラスだが、短期的には非常に困難な状況に陥る」と述べた。

今回の決定に先立ち、中国最高人民法院(最高裁)と香港司法当局は民商事判決判決の相互承認・執行に関する合意文書に署名したと発表。合意は中国と香港で直ちに発効する。

香港の裁判所は2021年半ばから続く債務危機以降、29日までに少なくとも3社の中国の不動産開発会社に対し、清算命令を出している。



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


20250401issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年4月1日号(3月25日発売)は「まだ世界が知らない 小さなSDGs」特集。トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


SDGs
使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが「竹建築」の可能性に挑む理由
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ミャンマー地震の死者1000人超に、タイの崩壊ビル

ビジネス

中国・EUの通商トップが会談、公平な競争条件を協議

ワールド

焦点:大混乱に陥る米国の漁業、トランプ政権が割当量

ワールド

トランプ氏、相互関税巡り交渉用意 医薬品への関税も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 6
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 9
    最古の記録が大幅更新? アルファベットの起源に驚…
  • 10
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 6
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 7
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 8
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 9
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 10
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中