USスチール買収合戦の内幕判明、日鉄に敗れたCクリフスの動き
1月24日、日本製鉄による買収に合意している米USスチールが公表した資料で、日鉄に競り負けたクリーブランド・クリフス側の動きや、USスチール経営陣の最終決定に至る経緯の詳細が判明した。写真はUSスチールの施設。インディアナ州ゲーリーで2018年撮影(2024年 ロイター/Rajesh Singh)
日本製鉄による買収に合意している米USスチールが24日公表した資料で、日鉄に競り負けたクリーブランド・クリフス側の動きや、USスチール経営陣の最終決定に至る経緯の詳細が判明した。
USスチールが明らかにしたのは、買収入札プロセスの記録。ここで「D社」が現金と株式の組み合わせ方式に基づく1株当たりの買収提示額を54ドルに引き上げるとともに、シナジー効果でUSスチール株主に対してさらに1株当たり6.50ドルの追加利益をもたらすことができるとアピールしていた。
事情に詳しい関係者によると、このD社はクリーブランド・クリフスを指す。日鉄は2023年12月18日に、全額現金方式による141億ドル、1株当たり55ドルでのUSスチール買収を発表したが、クリーブランド・クリフスは自分たちの提案の方が実質的な金額は高くなると主張したという。
一方USスチール側が、クリーブランド・クリフスとの統合について独占禁止当局に却下されるのではないかと懸念していたことも分かった。その理由は、両社を合計した米自動車業界向けの鉄鋼製品供給量の多さや、一つの企業が米国の鉄鉱石生産の最大95%を抑えてしまう事態になることだ。
クリーブランド・クリフスはそうしたリスクへの対応として、当局から買収を承認されなかった場合に支払う違約金を設定したほか、最大で売上高20億ドル相当の資産を手放すと約束。しかしこれは、USスチールのアドバイザーが勧告していた70億ドル相当の資産売却を大きく下回るものだった。
またUSスチールの取締役会は、そうした資産売却の可能性自体が統合後の新会社の価値を損ねかねないし、買収資金の半分を株式発行で賄うクリーブランド・クリフスの計画に関しても、株主の承認をクリアしなければならないという点で不安を感じていたようだ。
日鉄の買収は全額現金なので、株主投票による承認は必要とされない。
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