最新記事
自動車

中国メーカーのEVシフト進み、当局が過剰生産を懸念 テスラの上海工場増強に暗雲か

2023年6月20日(火)12時17分
ロイター
テスラの上海工場

かつて国内EV産業の発展を後押ししようとテスラの誘致に熱心だった中国政府は、今では国内の過剰なEV生産能力への懸念から自動車メーカーの工場増強に慎重になっている。写真はテスラの上海工場で12日撮影(2023年 ロイター/Aly Song)

米電気自動車(EV)大手テスラは中国・上海工場の増強を目指しており、この野心的な計画の成否は、中国政府から承認が得られるかどうかにかかっている。

しかし、かつて国内EV産業の発展を後押ししようとテスラの誘致に熱心だった中国政府は、今では国内の過剰なEV生産能力への懸念から自動車メーカーの工場増強に慎重になっている。

低コストの優位性を生かして輸出拡大を図ろうと上海工場の増強を画策するテスラは、中国市場で成功して販売台数を劇的に増やしたことが、事業拡大の逆風になるという皮肉な事態に直面している。

ライバル企業の幹部やアナリストによると、中国国家発展改革委員会(発改委)は過剰生産能力とテスラが仕掛けた値下げ競争を懸念しており、どの自動車メーカーに対しても、EV工場の新規承認に慎重な姿勢だという。

コンサルタント会社オートモビリティーの創業者兼最高経営責任者(CEO)、ビル・ルッソ氏の推計によると、中国の自動車市場の過剰生産能力は年間約1000万台と、昨年の北米全生産台数の3分の2に相当する。

「テスラ側は、新製品があるのだから新しい工場が必要だと主張するだろう。だが、中国政府側は市場の供給過剰ばかりに目が向いている」という。

テスラは新型コロナウイルス対策の上海封鎖時に地元政府から提供された支援に感謝する昨年5月の熱烈な書簡で、現工場から3キロほどの場所に年間生産能力45万台の新工場を建設する計画の詳細を公表した。販売価格に基づく年間の生産額は180億ドル強。元農地の建設予定地は、今のところ雑草が伸び放題だ。

テスラのイーロン・マスクCEOや中国当局の公式発言では明らかにされなかったが、この問題に詳しい関係者によると、マスク氏の先月末の電撃的な訪中の際に、上海工場増強計画が話題に上った。

マスク氏は丁薛祥・筆頭副首相など中国の高官との会談後、テスラの少人数のスタッフに工場増強についての話し合いで「前向きな進展があった」と明かしたが、詳細な説明はなかったという。

テスラと発改委は、コメント要請に応じなかった。

試写会
『ガール・ウィズ・ニードル』のトークイベント付き試写会に5組10名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米とウクライナ、鉱物資源アクセス巡り協議 打開困難

ビジネス

米国株式市場=反発、ダウ619ドル高 波乱続くとの

ビジネス

NY外為市場=ドル全面安、貿易戦争巡る懸念で 安全

ワールド

EU財務相、米との関税交渉で団結確認 報復の用意も
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ関税大戦争
特集:トランプ関税大戦争
2025年4月15日号(4/ 8発売)

同盟国も敵対国もお構いなし。トランプ版「ガイアツ」は世界恐慌を招くのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止するための戦い...膨れ上がった「腐敗」の実態
  • 3
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助けを求める目」とその結末
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 6
    米ステルス戦闘機とロシア軍用機2機が「超近接飛行」…
  • 7
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 8
    「ただ愛する男性と一緒にいたいだけ!」77歳になっ…
  • 9
    コメ不足なのに「減反」をやめようとしない理由...政治…
  • 10
    関税ショックは株だけじゃない、米国債の信用崩壊も…
  • 1
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 2
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 3
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    凍える夜、ひとりで女性の家に現れた犬...見えた「助…
  • 9
    「やっぱり忘れてなかった」6カ月ぶりの再会に、犬が…
  • 10
    ロシア黒海艦隊をドローン襲撃...防空ミサイルを回避…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    公園でひとり歩いていた老犬...毛に残された「ピンク色」に心打たれる人続出
  • 3
    ひとりで海にいた犬...首輪に書かれた「ひと言」に世界が感動
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の…
  • 6
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中