中国メーカーのEVシフト進み、当局が過剰生産を懸念 テスラの上海工場増強に暗雲か
かつて国内EV産業の発展を後押ししようとテスラの誘致に熱心だった中国政府は、今では国内の過剰なEV生産能力への懸念から自動車メーカーの工場増強に慎重になっている。写真はテスラの上海工場で12日撮影(2023年 ロイター/Aly Song)
米電気自動車(EV)大手テスラは中国・上海工場の増強を目指しており、この野心的な計画の成否は、中国政府から承認が得られるかどうかにかかっている。
しかし、かつて国内EV産業の発展を後押ししようとテスラの誘致に熱心だった中国政府は、今では国内の過剰なEV生産能力への懸念から自動車メーカーの工場増強に慎重になっている。
低コストの優位性を生かして輸出拡大を図ろうと上海工場の増強を画策するテスラは、中国市場で成功して販売台数を劇的に増やしたことが、事業拡大の逆風になるという皮肉な事態に直面している。
ライバル企業の幹部やアナリストによると、中国国家発展改革委員会(発改委)は過剰生産能力とテスラが仕掛けた値下げ競争を懸念しており、どの自動車メーカーに対しても、EV工場の新規承認に慎重な姿勢だという。
コンサルタント会社オートモビリティーの創業者兼最高経営責任者(CEO)、ビル・ルッソ氏の推計によると、中国の自動車市場の過剰生産能力は年間約1000万台と、昨年の北米全生産台数の3分の2に相当する。
「テスラ側は、新製品があるのだから新しい工場が必要だと主張するだろう。だが、中国政府側は市場の供給過剰ばかりに目が向いている」という。
テスラは新型コロナウイルス対策の上海封鎖時に地元政府から提供された支援に感謝する昨年5月の熱烈な書簡で、現工場から3キロほどの場所に年間生産能力45万台の新工場を建設する計画の詳細を公表した。販売価格に基づく年間の生産額は180億ドル強。元農地の建設予定地は、今のところ雑草が伸び放題だ。
テスラのイーロン・マスクCEOや中国当局の公式発言では明らかにされなかったが、この問題に詳しい関係者によると、マスク氏の先月末の電撃的な訪中の際に、上海工場増強計画が話題に上った。
マスク氏は丁薛祥・筆頭副首相など中国の高官との会談後、テスラの少人数のスタッフに工場増強についての話し合いで「前向きな進展があった」と明かしたが、詳細な説明はなかったという。
テスラと発改委は、コメント要請に応じなかった。