最新記事
農業

「廃棄される野菜は全体の40%」──規格外野菜を有効利用する、女性起業家の挑戦について

Cutting Waste

2023年4月19日(水)14時59分
ケリー・アン・レンズーリ(ジャーナリスト)
クリスティン・モーズリー

COURTESY OF FULL HARVEST

<「なぜゴミを売るのか?」...余剰・規格外で廃棄される農産物と食品・飲料会社をつなげれば、その質問自体が間違っていることが分かる>

米農務省の推定では、アメリカは年間6000万トン以上の食料を廃棄している。これは実に全供給量の40%に当たる。

生産過程での傷みや消費者の食べ残しなど理由はさまざまだが、驚くことにそのうち3分の1が、スタート地点である農場で廃棄されている。

これを変えるべく、余剰・規格外農産物と食品・飲料会社をつなぐデジタル市場のフルハーベストを創業したのがクリスティン・モーズリーだ。

約10年前、彼女が飲料会社の事業開発責任者だったとき、どうせジュースにするのに規格外のレタスが畑で粉砕されるのを見て、こうした農産物の利用法を見つけると誓った。

当初は青汁などを作ろうとした。だが8カ月の試行後、適当な卸売業者を見つけられず、自らが卸売りをすることを思い付いた。

会社が軌道に乗るまでの2年半は貯蓄2万5000ドルと、車のレンタルや大学生の論文執筆を手伝う副業などで稼いだ5万ドルで生活した。

「地下室に住み、米と豆とピーナツバター・サンドイッチを食べ、仕事に必要なものはカードローンで買っていた」

なぜゴミを売るのか? と聞かれることもあったが動揺せず、逆に「彼らが間違っていると証明したい」とやる気が出た。

今ではダノンやモンデリーズなどの大手食品メーカーがジュースやヨーグルトの原料をフルハーベストから調達する。

「これまで3万4000トン以上の農産物を販売した」と彼女は言う。「環境にも、売る側と買う側の利益にも影響を与えているのを何より誇りに思う」

試写会
カンヌ国際映画祭受賞作『聖なるイチジクの種』独占試写会 50名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:フィリピンの「ごみゼロ」宣言、達成は非正

ワールド

イスラエル政府、ガザ停戦合意を正式承認 19日発効

ビジネス

米国株式市場=反発、トランプ氏就任控え 半導体株が

ワールド

ロシア・イラン大統領、戦略条約締結 20年協定で防
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 2
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 3
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲うウクライナの猛攻シーン 「ATACMSを使用」と情報筋
  • 4
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 5
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 6
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者…
  • 7
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 8
    「ウクライナに残りたい...」捕虜となった北朝鮮兵が…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    雪の中、服を脱ぎ捨て、丸見えに...ブラジルの歌姫、…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 5
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 6
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 9
    ドラマ「海に眠るダイヤモンド」で再注目...軍艦島の…
  • 10
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 7
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 8
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中