最新記事
中国経済

アリババの大規模事業再編は中国当局の締め付け終了の兆しか

2023年3月30日(木)11時15分
ロイター
アリババの看板

中国電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディングが大規模な事業再編を発表したことについて、中国当局による企業への締め付けが終わりに近づいている兆し投資家は受け止め、株価が上昇している。写真は北京で2021年8月撮影(2023年 ロイター/Tingshu Wang)

中国電子商取引大手アリババ・グループ・ホールディングが大規模な事業再編を発表したことについて、中国当局による企業への締め付けが終わりに近づいている兆し投資家は受け止め、株価が上昇している。

アリババは28日、6つの事業グループに再編すると発表した。各事業会社が新規株式公開(IPO)や外部からの資金調達を検討する。

同日の米株式市場でアリババ株は14.3%上昇し、29日の香港市場では一時16.3%高となった。

ピクテ・アセット・マネジメントでアジア市場を担当するジョン・ウィザー氏は「これはアリババに対する規制当局の監視が終わりに近づいていることを示すものだ」と指摘。「同社は今後、規制当局や政策立案者との良好な関係を回復するだろう」と予想した。

アリババは30日に電話会見を開き分割計画について説明する。

2人の関係者によると、同グループはかなり前から事業分割を計画していた。

関係者の1人は、同社の株価が各事業の価値の合計よりも大幅に割安になっているとの認識が社内外であったと明かし、同社は「肥大しすぎていた」と語った。

分割した事業のIPOは5回になるとし、上場先は香港になる可能性が最も高いと述べた。アリババの収益の柱である通販サイト、淘宝(タオバオ)と天猫はアリババ本体の下にとどまるという。

痛みは終わるか

バンク・オブ・アメリカのアナリストは28日、アリババ再編は「重要な実験」で、中国の大企業が「社会への貢献」という指導部の要求に応えられるかどうかの試金石になるとの見方を示した。

北京云一資産管理の最高投資責任者(CIO)Zhang Zhihua氏は、中国の新指導部と地方政府がこのところ民間部門に対する姿勢を軟化させ、投資家心理が改善していたと話した。

電子商取引で長年アリババと競ってきたJDドットコム(京東商城)の株価は29日、一時7.8%上昇した。ゲーム最大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)は5.1%高となった。

CMCマーケッツのアナリスト、ティナ・テン氏は他のハイテク企業もアリババと同様の事業再編を行う可能性があるとの見方を示す。「そうなった場合、これらのコングロマリット(複合企業)の独占的な力が低下することになり、独占禁止に関する中国政府の規制の見直しにも合致する」と述べた。

スタンズベリー・リサーチで中国テクノロジー企業を調査しているBrian Tycangco氏は事業再編について、各部門の価値を高めるほか、政府が新たな規制を導入してもグループ全体に影響が及ぶのを回避できる公算が大きいと語った。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

EXCLUSIVE-中国、欧州EV関税支持国への投

ビジネス

中国10月製造業PMI、6カ月ぶりに50上回る 刺

ビジネス

再送-中国BYD、第3四半期は増収増益 売上高はテ

ビジネス

商船三井、通期の純利益予想を上方修正 営業益は小幅
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 2
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 5
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 6
    娘は薬半錠で中毒死、パートナーは拳銃自殺──「フェ…
  • 7
    米供与戦車が「ロシア領内」で躍動...森に潜む敵に容…
  • 8
    カミラ王妃はなぜ、いきなり泣き出したのか?...「笑…
  • 9
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」…
  • 10
    衆院選敗北、石破政権の「弱体化」が日本経済にとっ…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 5
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 6
    渡り鳥の渡り、実は無駄...? 長年の定説覆す新研究
  • 7
    北朝鮮を頼って韓国を怒らせたプーチンの大誤算
  • 8
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 9
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 10
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    ウクライナに供与したF16がまた墜落?活躍する姿はど…
  • 9
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 10
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中