最新記事

自己啓発

これだけは絶対にやってはいけない 稲盛和夫が断言した「成功しない人」に共通するたった1つのこと

2023年2月20日(月)15時45分
宮崎直子(ライフコーチ) *PRESIDENT Onlineからの転載

得度されたお坊さんでもあった稲盛さんは、天、宇宙、神といった言葉を使って、私たち塾生に人間を超えた偉大な力の話をよくしてくださった。「誰も見ていなくてもお天道様が見ている」という昔から日本に伝わる教えに基づいて、「リーダーたるもの周囲に安易に迎合するのではなく、お天道様が喜ぶ判断をせよ。そうすることで長期的に会社は発展していく」というのが稲盛さんの経営哲学だった。

そんなことで経営ができるのかと疑問に思うのも当然だろう。しかし稲盛さんの成功の秘密はここにあったのだ。

損得で考えればJAL再建は引き受けなかった

稲盛さんが「敬天愛人」をベースに下した英断でビジネスがうまくいった例は枚挙にいとまがない。

その1つが、経営破綻したJALの再建を打診された時の話だ。当初、稲盛さんの周りの人はみんな大反対したという。もしも再建に失敗したら、稲盛さんの晩節を汚すことになると、周りの人は心配した。

そんな心配をよそに、2010年2月1日、会社更生法適用申請から2週間後に会長に就任。わずか2年でV字回復させ、みごと再建を成し遂げた。

当時稲盛さんは、78歳。既に2つも立派な会社を育てたのだから、損得勘定で判断すれば、悠々自適に老後を楽しんだ方がよかったはずだ。けれども稲盛さんは、「航空会社というのは日本の経済にとってとても重要な業界で、それがANAの一社独占になっては、日本の経済に打撃を与える。良い競争を保つためにもJALの再生は必須だ」と考えて、引き受けることにした。そこには、失敗したら自分の晩節を汚すことになるという損得勘定はなかった。ただ、「もし天が見ているとしたら、自分にどうしてほしいだろう」という視点で決断を下した。

表裏をなくしたら部下を信用できるようになった

「損得勘定」で物事を判断していれば、一時的には目覚ましい発展を遂げても、長い目で見ると没落してしまう。盛和塾に入って私が学んだのは、「敬天愛人」で判断することで企業を長期的に安定して成長させることができるということだ。

「儲けたい」の一心で立ち上げた会社が2、3年で消滅。大企業でさえ、社員や幹部の不正により一瞬の内に潰れてしまう。実際にそんな例を何度も見た。

そして、私自身の会社が伸び悩んでいるのも、私が損得勘定で物事を判断していたからだと分かった。具体的にすぐに効果が出たのは、従業員との関係だった。「天がいつも自分を見ているとしてどんな働き方をしたら喜んでもらえるだろう」という視点で自分自身が仕事に取り組むようになったら、部下に対する私自身の見方ががらりと変わった。

自分が損得勘定なしに、つまり裏表なしに一生懸命仕事をし始めたら、部下もそうなのだろうと思えるようになったのだ。それ以来、部下を信頼して、良好な関係を築き、部下の能力を最大限に引き出すことがとても自然にできるようになった。

自己肯定感を上下させる4大要因

さらにこの「敬天愛人」で判断するという稲盛さんの教えは、私自身の自己肯定感にも大きな影響を与えた。

拙著『鋼の自己肯定感』では、私が長らく住んでいるシリコンバレーに住む人々の習慣をベースに心理学や脳科学など最先端の研究結果をまとめている。この中では、自己肯定感を上げ下げする4大要因を「他人からの評価」「他人との比較における自己評価」「成功と失敗」「不測の事態」と定義し、その対処法について述べている。この4大要因にいかに振り回されず、確固たる自己肯定感を持つことができるか。実は、その方法の土台を築いてくださったのは、稲盛さんだ。

損得勘定で動いていた当時の私は、この4大要因に見事に振り回されていた。他人の評価に一喜一憂していたし、人と比べては自分の評価を上げたり下げたりしていた。何かに成功すれば自己評価が上がり、失敗すれば下がっていた。そして予期せぬ出来事が起こると、「どうして私が」と不満を抱えていたのだ。しかし、稲盛さんの哲学を学んだ私は、この4大要因を全て手放すことができた。

どういうことなのか。一つひとつお話ししたい。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:保護政策で生産力と競争力低下、ブラジル自

ワールド

焦点:アサド氏逃亡劇の内幕、現金や機密情報を秘密裏

ワールド

米、クリミアのロシア領認定の用意 ウクライナ和平で

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平仲介撤退の可能性明言 進
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプショック
特集:トランプショック
2025年4月22日号(4/15発売)

大規模関税発表の直後に90日間の猶予を宣言。世界経済を揺さぶるトランプの真意は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇した「透けレギンス」投稿にネット騒然
  • 2
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?...「偽スーパーフード」に専門家が警鐘
  • 3
    【クイズ】売上高が世界1位の「半導体ベンダー」はどこ? ついに首位交代!
  • 4
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 5
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 6
    「2つの顔」を持つ白色矮星を新たに発見!磁場が作る…
  • 7
    「100歳まで食・酒を楽しもう」肝機能が復活! 脂肪…
  • 8
    300マイル走破で足がこうなる...ウルトラランナーの…
  • 9
    『職場の「困った人」をうまく動かす心理術』は必ず…
  • 10
    今のアメリカは「文革期の中国」と同じ...中国人すら…
  • 1
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜け毛の予防にも役立つ可能性【最新研究】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ? 1位は意外にも...!?
  • 3
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最強” になる「超短い一言」
  • 4
    しゃがんだ瞬間...「えっ全部見えてる?」ジムで遭遇…
  • 5
    あなたには「この印」ある? 特定の世代は「腕に同じ…
  • 6
    パニック発作の原因とは何か?...「あなたは病気では…
  • 7
    中国はアメリカとの貿易戦争に勝てない...理由はトラ…
  • 8
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 9
    動揺を見せない習近平...貿易戦争の準備ができている…
  • 10
    【渡航注意】今のアメリカでうっかり捕まれば、裁判…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 6
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 7
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 8
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えな…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中