もはや企業に「中立」はない──懸念高まる中国依存、多国籍企業に迫る「苦渋の選択」
The End of Corporate Neutrality
また、リトアニアが首都ビリニュスに台湾代表処の設置を許可したところ、中国当局はリトアニア製部品が含まれる商品の輸入を事実上全て禁止した。中国のこうした措置を見て、東側ブロックの他の国々も同じような戦術を取ろうとするかもしれない。
ブロックの出現は、極東のように経済的な統合が進んだ地域では、特に深刻な問題となるだろう。ただ、冷戦時代のNATOとワルシャワ条約機構とは異なり、現代のブロックは正式な加盟を必要とせず、顔触れは随時変動する。
過去5年間を見ても、フィリピンなど4カ国が西側にシフトする一方で、ベラルーシやイラン、ミャンマーなど10カ国が東側にシフトした。WTWとオックスフォード・アナリティカによると、5年前と比べると西側寄りの国は5つ減った計算になる。
実際、西側は友人を失いつつある。5年前はWTWの評価対象になった61カ国のうち13カ国が、西側と極めて親しい関係にあった。それが今は、ヨルダンやメキシコなど5カ国と台湾しかない。
また、別の15カ国(アルゼンチン、UAE、サウジアラビアなど)は、中立に傾いていると分析されている。ベトナムは中国と緊密な関係だったが、最近は中立にシフトしている。だから今、ベトナムは欧米企業にとって魅力的な投資先になっているのだ。
もっと「友人」を増やせ
ベトナムのように、中国が莫大な投資をちらつかせていても中国から距離を置き、中立にシフトする国々があることは西側諸国にとっては喜ばしいトレンドだ。
「国連で、ロシアのウクライナ侵攻非難決議を支持しなかった国が40カ国もあった」と、マイケル・ファロン元英国防相は語る。「西側は、自陣営の国々の繁栄の基礎となる、国際秩序と防衛同盟に対するリスペクトをもっと強化するための努力をするべきだ」
もちろん、現在中立の立場を取る18カ国や、多くの東側諸国を西側に引き込むのは容易ではないだろう。スウェーデンやフィンランドでさえNATO加盟を申請する時代に、中立の立場を取るということは、その国が「容易になびかない国」を演じることに利益を見いだしている証拠だ。
「トルコやアルゼンチン、サハラ以南のアフリカ諸国をめぐり、超大国は争奪戦を交えるかもしれない」と、WTWのウィルキンは語る。
だが、西側諸国にとって、それはやる価値のある戦いなのかもしれない。フレンド・ショアリングは加速しており、重要な商品を信頼できる国で生産できるのは間違いなくいいことだ。
西側政府や企業は、十分な数の信頼できる国を必要としている。フレンド・ショアリングには、まずフレンド・ウィニング(友人を獲得すること)が必要なのだ。