商用軽EVに低価格で仕掛ける中国勢、打ち破れるか日本車ブランドの壁

ASFの商用EVの製造を担当する上汽通用五菱汽車の小型EV 新出行 / YouTube
「中国企業の基本的なスピード、特に決断の早さに圧倒される」ーー中国自動車メーカーとタッグを組み、日本の商用電気自動車(EV)市場を攻め込むEVベンチャー企業ASF(東京都千代田区)の飯塚裕恭社長はこう語る。飯塚氏はかつて家電量販店大手のヤマダ電機(現・ヤマダホールディングス)で取締役執行役員を務め、EV部門を担当した経験があり、その際、国内メーカーと組むことの難しさを痛感していた。
脱炭素に向けた対策の一環として日本の物流業界では軽商用車のEV化が選択肢として注目されている。自動車メーカーにとって市場規模はまだ小さいものの、潜在的な成長期待は強い。三菱自動車が生産をいったん終えた軽商用EVの再販売に踏み切るなど異例の動きをみせているほか、ホンダなど日本勢も投入準備を進めている。こうしたブランド力のある国内メーカーに対して価格面での競争力を前面に打ち出して挑むのがASF・中国メーカー連合だ。
ASFの飯塚社長は「我々の価格についてこられる国内メーカーはいないのではないか」と自信をみせる。「コストほど顧客に刺さるサービスはない。15─16社ほど、さまざまな業界大手から連絡が来ている」とも明かす。商談が進んでいる企業はメンテナンス会社、清掃会社、飲料メーカーなど多岐にわたるという。
同社が開発した商用EVは中国の上汽通用五菱汽車が生産。2023年春にSGホールディングス傘下の佐川急便に納車する予定だ。佐川は30年までに保有している軽自動車7200台全てをEV化することを目指している。
電池は車載電池世界最大手で中国の寧徳時代新能源科技(CATL)製のものだ。トヨタ自動車やホンダ、日産自動車など日本勢もCATLから供給を受けている。
納入先の佐川からは「200キロメートルは安心して走りたい」との要望があり、航続距離は230キロメートルを確保した。価格は国の補助金を使うと150万円程度になる。