ウクライナ男性が大挙帰国、中欧諸国が深刻な労働者不足に
溶接、製造装置操作、金属、フォークリフト運転など資格が必要な製造部門では労働者が数百人規模で不足しているという。
経営幹部や業界団体によると、ウクライナ人労働者離職の影響は、欧州の新興国で特に強く感じられるという。こうした地域は、ドイツなどEU工業先進国に比べて自動化が進んでいないためだ。
電子機器の製造などを手掛けるフィンランドのスカンフィルは、同社が事業展開するポーランドで急激に人手不足が起きたため自動化促進計画を強化した。ただ同社の人事部門の幹部は、自動化が不可能な職場もあり、引き続き多くの労働者が必要だと述べた。
経済的影響
BNPパリバ銀行ポルスカのチーフエコノミスト、ミハル・ディブラ氏は、経済データと地元企業からの聞き取り調査を基に、ウクライナ人労働者の離職が少なくとも短期的にポーランド経済に対して悪影響を及ぼすのは明らかだが、その規模を具体的に示すは早計だと述べた。ポーランドはEUで6番目の経済規模を誇る。
企業はウクライナでの戦争によるエネルギーや材料のコスト高騰、パンデミックによるサプライチェーン(供給網)の長引く混乱にさらされており、人手不足の問題が追い打ちをかけた形になっている。企業のインフレ指標である生産者物価指数(PPI)の6月の前年比上昇率はポーランドが25.6%近く、チェコが28.5%だった。
一部の企業は労働者を呼び込むため、給与の提示額を引き上げている。
企業は人材確保に躍起
ポーランドの人材派遣会社によると、顧客企業は人手不足に対処するため、男性をより肉体的にきつい仕事に異動させ、その穴を埋めるためにウクライナ難民の女性を採用している。
また働き方を見直し、モンゴルやフィリピンなど、言語や渡航、ビザの問題から迅速な採用が難しい国にも目を向けなければならなくなっている。
人材紹介会社の経営幹部によると、ポーランドは過去13年間でウクライナ人労働者の数が38倍に増えており、こうした対応ではとても追いつかないという。
人材派遣会社が2000人の難民にフォークリフトの操作方法を学ぶコースへの参加を呼びかけたところ、600人余りの女性から回答があり、数十人が最近、4週間のコースの受講を開始した。
受講者の1人で、ウクライナからポーランドに逃れてきた元営業部長のオルハ・ボロビさんは、自動車メーカーの倉庫で職を得た。「ウクライナでは頭を使って働いていた。ポーランドでは体を使っている」と話した。
(Fanny Brodersen記者、Anna Koper記者、Michael Kahn記者)