トヨタ、サブスクでEV巻き返しへ リースが主流の法人需要で普及狙うか
小寺社長は、想定される顧客について「『今度はトヨタのEVにしてみようか』というように、新しいものに飛びついてくるような人がまず最初にくるだろう」とみている。
一方、サブスクの料金設定に関しては、割安感は感じられないとの声もある。SBI証券の遠藤功治シニアアナリストは「高い」という印象だ、と話す。
「試行錯誤」
日本自動車販売協会連合会によると、2021年に日本で販売された乗用車のうち、EVはまだ1%に過ぎない。SBI証券の遠藤氏は「売る方も買う方も試行錯誤。トヨタのサブスクも、これを顕著に反映している」と語る。
ただ、欧州や中国でEV販売をすでに本格化させている海外勢は日本でも積極的だ。日本自動車輸入組合によれば、21年のEV輸入台数は過去最高の8610台と前年比3倍近くに急増。このうち約6割、5000台以上がテスラ車だったとされる。スウェーデンのボルボ・カー日本法人では昨年、限定100台のEVをサブスクで提供したが、6倍近い575件の応募があったという。
日本勢も動き出す。同じ12日、SUBARUはbZ4Xの兄弟車「ソルテラ」の受注を開始、日産も量産EV第2弾「アリア」の標準車の国内販売を始める。ただ、いずれも販売は従来通りの売り切りだ。車両価格はソルテラが594万円から、アリアが539万円からで、国の補助金利用で400万--500万円台からとなる。
「自信があるからサブスク」
日産は世界初の量産型EV「リーフ」を10年に発売し、市場を開拓してきた自負がある。これまで販売台数は想定通りに伸ばせていないが、EV販売の長年の経験を武器に今年はアリアのほか、三菱自動車と共同開発した軽自動車、リーフの新型車の3車種を投入する予定だ。
各車種の販売台数目標は未公表だが、同社の日本マーケティング本部チーフ・マーケティング・マネージャーの柳信秀氏は「3車種全てアクセル全開で売る計画だ」と話し、「今年度売らずにいつ売るのか。今年失敗したら(チャンスは)もう2度とない」といった気概で臨んでいるという。
トヨタも「真面目にEVを普及させたい」(小寺社長)との思いだ。東海東京調査センターの杉浦誠司シニアアナリストは、規制でEVの普及が進む欧州では企業の環境対策としてEVが導入されやすく「リースが主流の法人需要が強い」といい、トヨタも欧州同様の普及を日本で狙うのでは、との見方だ。「売り切りにすると車両を分解される恐れもあり、トヨタはEVに自信があるからこそサブスクを選んだ」ともみている。
ある日産幹部は、売り切りにしなかったトヨタと「真っ向勝負できない」と悔しがる。ハイブリッド車で躍進したトヨタがEVでも巻き返せるのか戦略が試されている。
(白木真紀、杉山聡 編集 橋本浩)
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