東証プライム、新指数のリアルタイム更新なしで戸惑う投資家 改革は道半ば
東京証券取引所の60年ぶりとなる市場再編後も、日本株は盛り上がりを欠いている。写真は2020年10月撮影(2022年 ロイター/Issei Kato)
東京証券取引所の60年ぶりとなる市場再編後も、日本株は盛り上がりを欠いている。投資家の不満の1つは東証プライム市場指数など新たに導入された指数のデータがリアルタイムで更新されないことだ。日中の動きが把握できないだけでなく、インデックスファンドや先物の組成も難しく、「今のままでは使いにくい」(国内運用会社)との声が出ている。
再編初日、午後4時までデータ配信されず
東証が市場区分の再編を実施した4日、ある国内証券会社では「なぜ動かないんだ。コンピューターが壊れているのか」と、社内がざわめく場面があった。東証が新たに設けたプライム市場指数、スタンダード市場指数、グロース市場指数のデータが表示されなかったためだ。初めてデータが表示されたのは午後4時だった。
実は、新指数はTOPIXなどと異なり、数値算出を毎営業日午後4時の1回きりとする「バッチ」型の指数で、取引時間中のリアルタイムでの値動きは配信しないことが決まっていた。
これが市場には十分に周知されておらず、戸惑いが広がった。注目する投資家も多かっただけに、マーケットからは「東証は新指数を普及させる気があるのだろうか」(別の国内証券)と、いぶかる声も漏れた。
1日1回の配信の方針には、市場区分の再編を扱った金融庁の金融審議会での議論が反映されている。特定の市場区分と指数の構成銘柄が連動している場合、インデックスファンドなどを通じて、時価総額や流動性の低い銘柄に資金が流れ、価格形成に歪みが生じかねないとの弊害が指摘された。一方、指数には市場全体の動向を示す機能もある。この目的のために、1日1回の配信なら問題ないとの判断で落ち着いた。
ただ、ニッセイ基礎研究所の井出真吾チーフ株式ストラテジストは「リアルタイムで更新しないから問題ないという整理であれば、本末転倒だろう」と指摘する。新指数はTOPIXと同様に銘柄が多すぎることが問題の本質だとの見方だ。