最新記事

株式

東証プライム、新指数のリアルタイム更新なしで戸惑う投資家 改革は道半ば

2022年4月12日(火)18時52分

パッシブ運用を通じて株価が歪むリスクは、市場再編後も継続して算出されているTOPIXが抱えている。TOPIXは、2022年10月から、流通株式時価総額100億円未満の銘柄のウェイトを段階的に減らしていく方向だ。SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストによると、4月8日時点で流通時価総額が100億円に満たない企業は532社。4日時点でTOPIXの対象銘柄数は2174、プライム市場指数は1837となっている。

ファンドや先物の組成困難に

株価指数がリアルタイム配信されない場合、指数に連動するインデックスファンドを作りにくくなる。投信の売買の申し込みは原則として午後3時までで「指数が高いか安いかわからなければ、投資家は売買の判断ができない」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用本部長)とみられている。

リアルタイムデータがなければ、指数先物も組成しにくい。現物株をヘッジするには先物が有効だが、先物の取引が活発になるためには「投機筋を含め、多様な投資家を呼び込んで流動性を高める必要がある。リアルタイムでない指数では現実的でない」(国内証券)と指摘されている。

「新指数が複数できたことで裁定取引などの投資機会が存在したはずだが、それができない」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役)との声もある。

TOPIXとプライム市場指数の違いも明確でない。経過措置が設けられたことで、東証1部企業の約8割がプライムに移行することになった。TOPIXには先物もあるため「それならTOPIXでいいではないか」(国内投信)とされてしまう。

事情に詳しい関係筋によると、JPXグループ傘下で、株価指数の開発・算出を担うJPX総研は、市場のニーズを踏まえて新指数の扱いに柔軟な姿勢で臨む構えだ。日中の動きを把握したいとの声が高まれば、新指数のリアルタイム配信も検討の対象になるという。

内国株式売買代金の4─8日の平均は1日3.47兆円で、1月の月間平均3.62兆円や2月の3.70兆円を下回った。市場再編は海外投資家などの注目を集めるいい機会となるはずだが、改革に時間がかかりすぎれば「鮮度」が失われるおそれもある。

(平田紀之 編集:伊賀大記)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・外国人同士が「目配せ」する、日本人には言いづらい「本音」
・中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ハマスが停戦違反と非難、ネタニヤフ首相 報復表明

ビジネス

ナイキ株5%高、アップルCEOが約300万ドル相当

ワールド

ゼレンスキー氏、和平案巡りトランプ氏との会談求める

ワールド

タイ・カンボジア両軍、停戦へ向け協議開始 27日に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 5
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 6
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 7
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 8
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 9
    【投資信託】オルカンだけでいいの? 2025年の人気ラ…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 10
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中