東証プライム、新指数のリアルタイム更新なしで戸惑う投資家 改革は道半ば
パッシブ運用を通じて株価が歪むリスクは、市場再編後も継続して算出されているTOPIXが抱えている。TOPIXは、2022年10月から、流通株式時価総額100億円未満の銘柄のウェイトを段階的に減らしていく方向だ。SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストによると、4月8日時点で流通時価総額が100億円に満たない企業は532社。4日時点でTOPIXの対象銘柄数は2174、プライム市場指数は1837となっている。
ファンドや先物の組成困難に
株価指数がリアルタイム配信されない場合、指数に連動するインデックスファンドを作りにくくなる。投信の売買の申し込みは原則として午後3時までで「指数が高いか安いかわからなければ、投資家は売買の判断ができない」(しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹運用本部長)とみられている。
リアルタイムデータがなければ、指数先物も組成しにくい。現物株をヘッジするには先物が有効だが、先物の取引が活発になるためには「投機筋を含め、多様な投資家を呼び込んで流動性を高める必要がある。リアルタイムでない指数では現実的でない」(国内証券)と指摘されている。
「新指数が複数できたことで裁定取引などの投資機会が存在したはずだが、それができない」(いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役)との声もある。
TOPIXとプライム市場指数の違いも明確でない。経過措置が設けられたことで、東証1部企業の約8割がプライムに移行することになった。TOPIXには先物もあるため「それならTOPIXでいいではないか」(国内投信)とされてしまう。
事情に詳しい関係筋によると、JPXグループ傘下で、株価指数の開発・算出を担うJPX総研は、市場のニーズを踏まえて新指数の扱いに柔軟な姿勢で臨む構えだ。日中の動きを把握したいとの声が高まれば、新指数のリアルタイム配信も検討の対象になるという。
内国株式売買代金の4─8日の平均は1日3.47兆円で、1月の月間平均3.62兆円や2月の3.70兆円を下回った。市場再編は海外投資家などの注目を集めるいい機会となるはずだが、改革に時間がかかりすぎれば「鮮度」が失われるおそれもある。
(平田紀之 編集:伊賀大記)
【話題の記事】
・外国人同士が「目配せ」する、日本人には言いづらい「本音」
・中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか
・日本のコロナ療養が羨ましい!無料で大量の食料支援に感動の声
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...