「日本経済」が韓国に追い抜かれた納得の理由 同じ構造的問題を抱えた両国で何が差を生んだのか
いずれにしても、日本と韓国における1人当たりのGDPは、アメリカやヨーロッパを大きく下回っており、韓国は追いつきつつある一方で、日本はこれに後れをとっている、というのが今の構図だ。しかも韓国は構図的欠陥の少なくとも一部を改善するため、より多くの取り組みを行っている。逆に言えば、日本は韓国から学ぶところがある、というわけだ。
経済がきちんと成長するためには、高い潜在的成長を実現するための生産性向上を実現しなければいけない。同時に、経済がフル稼働するには、需要側の安定性が必要である。
この点で、韓国は日本よりうまく需要側をコントロールしてきた。前述の通り、韓国では労働者の賃金がGDPと並行して上昇している。その結果、韓国の世帯は自国が生産したものを買う余裕がある。正常な経済では、民間需要の不足を補うために、慢性的な政府による支出と、必要以上に大きな貿易黒字は必要ないのだ。
賃金格差については、韓国のほうが日本より状況が悪いが、韓国はこの改善にも取り組んでいる。例えば、最低賃金は中央値は62%に引き上げられており、これはOECDで3番目に高い比率になっている。日本はいまだ45%にとどまっている。
世界的な危機への耐性が高い韓国
韓国の対GDPにおける輸出額は日本の2倍だが、内需が強いことから、韓国は世界的な危機に対して日本より耐性がある。2008〜2009年の金融危機時、日本のGPDが7%減少した一方、韓国のGDPは4%増加した。また、過去2年のコロナ禍において日本のGDPは3%低下したのに対して、韓国のGDPは3%上昇した。一般的にマクロ経済危機の影響を受けにくい国は、長期的に平均成長率が高くなる。
生産性の面では、経済成長に必要な第一要素は最新設備への投資である。1980年当時、韓国の各労働者は日本の労働者の23%の資本しか持っていなかったが、2020年までに韓国の労働者は日本の労働者より12%多く持つようになった。
2つ目の大きな要素は、教育と訓練である。「人的資本」は、1人ひとりがどれだけ学校教育を受け、さらなる追加の学歴が各国の成長に貢献するものだが、1960年、韓国は日本と比べて70%の人的資本しか享受していなかった。これが2019年までに5%増加し、韓国の人的資本は先進国31カ国中5位となり、日本は13位になった。
多くの日本人が大学を卒業しているにもかかわらず、日本はなぜ後れをとっているのだろうか。2020年には、24〜34歳の年齢層では韓国人の70%が大卒で、日本は62%と先進国トップレベルにある。ここからわかるのは、日本企業がこうした高い学歴を持つ人を最大限に活用する訓練やテクノロジーを導入できていない、ということだ。
例えば、大卒者であったとしても非正規労働者は正規労働者が普通に受けているような、オン・ザ・ジョブ・トレーニング(OJT)をほとんど受けていない。また、日本企業のオフ・ザ・ジョブ・トレーニング(職場外研修)への支出は1991年以来40%減少している。OJTの費用は総人件費とは別に計算されていないが、非正規の割合が増加しているため、ほぼ確実に減少しているだろう。