継続か撤退か......ロシア進出の日本企業が苦慮 欧米勢撤退で焦り募る
日本はLNGの約1割をロシアから輸入している。官民連合体のサハリン石油ガス開発(SODECO)への出資を通じてサハリン1に関わる日本政府は明確な方針を示しておらず、岸田文雄首相は3日夜の会見で、「エネルギーの安定供給や安全保障の観点から、状況をしっかり判断した上で決定すべきことだ」と述べた。
首相に近い政府関係者は、ウクライナ危機が長期化した場合、「日本がロシアに資金供給を続けていること自体が批判されるリスクがある」と懸念する。エネルギー業界に詳しいある与党関係者は「現在はロシアからのガス調達を継続している欧州も調達を停止することになれば、日本も対応が必要だ」と語る。
三井物産は4日、「安定供給の観点も踏まえ、日本政府や事業パートナー含むステークホルダーとも今後の方針に関して協議を続け適切に対応する」との声明を出した。三菱商事はロイターの取材に「シェルの発表内容の詳細を分析の上、日本政府およびパートナーとの検討を進める」としている。伊藤忠と丸紅はサハリン1について、SODECOとして対応を検討しているとしコメントを控えた。
制裁対象外でも事業停止
日本企業の多くは、欧米企業ほど株主や取引先、当局、さらには従業員から批判を受けるような事態にはまだ直面していないと、ESG投資の専門家は指摘する。投資判断を助言するコンサルティング会社、モロー・ソダリでESGを担当するJana Jevcakova氏は「世界的な機関投資家を株主に持つ企業はじきに、あるいはすでに圧力を感じているが、日本にはまだそうした株主のいる企業が多くない」と話す。
企業自身も、率先して動けないことにもどかしさを感じている。「欧米が先に動き、それに従って、または、欧米に言われて初めて彼らについていく。はっきり軸足を持たず、じっくり状況を見極めてから、後ろ指を差されないようについていく」と、日本のあるメーカーの幹部は言う。「そういう意思決定をする企業が多いのではないか」と話す。
デンマークの年金基金アカデミカ―ペンションのアンデルス・シェルデ最高投資責任者(CIO)は、「良き企業市民であるには、政府の制裁方針を順守するだけでなく、制裁対象外の事業を停止することも必要となる」と指摘する。
「財務的な観点からは短期的に損失を意味するかもしれないが、ロシアが長期的に非難される可能性があることを考えると、長い目で見たコストはあまり変わらないだろう」。
(白木真紀、大林優香、竹本能文、David Dolan 編集:久保信博、William Mallard、田中志保)
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