円債金利、マイナス政策導入以来の高水準 日銀金融正常化の思惑消えず
日銀が金融正常化に向かう道筋はいくつかあるが、その1つはターゲット金利の短期化だ。現在のイールドカーブ・コントロール(YCC)政策は短期金利をマイナス0.1%、10年物国債金利をゼロ%を中心に維持しているが、目標金利を10年から5年に短期化すれば、5年以降の金利は上昇しやすくなる。
国際通貨基金(IMF)は今月28日、利回り目標をより短期的な金利を対象にするのが望ましいと指摘。経済活動に重要な短中期債の利回りを低く抑えつつ、長期化する金融緩和が金融機関の収益性に与える影響を軽減しうるとした。
5年債は27日にマイナス0.010%とゼロ%が視界に入る水準まで上昇。「事実上の短期化を織り込んだといってもいい水準」(国内証券)を付けている。10年債の1年先のフォワードレートは31日、0.270%とYCC目標レンジの0.25%を上回る水準まで上昇した。
「ワンクッション」が必要か
しかし、マーケットも日銀が次回会合(3月17─18日)で政策変更に動くとまではみていない。「黒田総裁があれだけ強く否定したからにはすぐには動けないだろう」と、アライアンス・バーンスタインの日本債券ポートフォリオ・マネージャー、橋本雄介氏は話す。
このため10年債金利がこのままYCC目標上限の0.25%をすぐに目指すとの見方は少ない。連続指し値オペなど、日銀が金利上昇を抑える「ツール」は豊富だ。米10年債金利が2%を目指すような展開にならなければ外部環境の後押しも弱い。
日銀が正常化に向かうには「ワンクッション」が必要だとみる声が多い。物価動向を点検して日本の物価も2%に届かないにせよプラスが安定的に維持できるとの分析が出るとか、政治側からインフレ抑制を求める声が強まるといった後押しだ。
世界的にインフレが進行。日本でも消費者物価指数は2%にまだ届かないが、多くの商品が値上げされている。その中、各国中銀は利上げなど金融正常化に動き始めた。「政策の柔軟化を検討するのであれば、今ほどのチャンスはない」(三菱UFJMS証券の六車氏)とも言える。現時点では市場の思惑先行ではあるが、思惑はなかなか消えそうにない。
(伊賀大記、取材協力:植竹知子 編集:石田仁志)
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