最新記事

中国経済

中国は金融緩和加速、米利上げによる資金流出にも配慮

2022年1月17日(月)11時29分
中国自動車部品製造会社の延鋒安道の上海工場で働く労働者たち

中国人民銀行(中央銀行)は、減速が続く経済成長を支えるため一段の緩和措置を打ち出そうとしている。ただ大幅な利下げよりも、実体経済にもっと潤沢に資金を流し込む方式を選ぶ公算が大きい。自動車部品製造会社の延鋒安道の上海工場で2020年2月撮影(2022年 ロイター/Aly Song)

中国人民銀行(中央銀行)は、減速が続く経済成長を支えるため一段の緩和措置を打ち出そうとしている。ただ大幅な利下げよりも、実体経済にもっと潤沢に資金を流し込む方式を選ぶ公算が大きい。政策決定の内幕を知る関係者やエコノミストは、こうした見方を示した。

経済活動がさらに鈍化する場合、多少の利下げは選択肢として残ってもおかしくないとの声が一部アナリストから聞かれるが、中国の政策担当者は米連邦準備理事会(FRB)が近く利上げを開始するとの観測が資金流出につながることを心配するだろう。

中国指導部は、経済てこ入れの強化を約束している。背景には、不動産市場の落ち込みが投資の足を引っ張り、新型コロナウイルスの感染防止対策として実施している厳しい規制措置が消費を抑制しているという事情がある。足元では新変異株オミクロン株の急速な拡大が新たな脅威となり、天津市で市民1400万人を対象にした大規模検査が行われるなど全土で規制がさらに厳格化。そのため何人かのエコノミストは、中国の今年の成長率予想を下方修正した。

こうした中、人民銀行の元金融政策委員で影響力の大きいエコノミストの余永定氏はロイターに「われわれは緩めの金融政策を必要としている。どの程度緩和するかは経済情勢次第だが、政策の方向性は明確だ」と語った。

内部関係者やエコノミストの見立てでは、人民銀行は数カ月中に銀行の準備率(RRR)をさらに引き下げ、銀行融資支援策や中期貸出ファシリティー(MLF)などを通じた量的緩和に動きそうだ。中小企業向けの支援拡大も見込まれる。

人民銀行は昨年12月15日にRRRを50ベーシスポイント(bp)引き下げ、同20日には最優遇貸出金利の指標であるローンプライムレート(LPR)の1年物を5bp下げている。

Zhixin Investmentのチーフエコノミスト、リャン・ピン氏は年内に1─2回のRRR引き下げがあると想定。中国政策科学研究会の経済政策委員会副ディレクター、シュー・ホンカイ氏は、もっと急速な引き下げを予想する。

内部関係者の1人は「経済の下押し圧力が比較的大きい以上、われわれには緩和政策が不可欠なのは間違いない」と認めた。

UBSのチーフ中国エコノミスト、タオ・ワン氏は11日記者団に、次のRRR引き下げは3月か4月と述べた一方、LPRは据え置かれるとの見方を示した。複数のエコノミストは、今の物価上昇を考えると実質金利は既に低く、LPRの下げ余地は限られると説明している。現在の1年物LPRは3.8%。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル軍、ラファ住民に避難促す 地上攻撃準備か

ビジネス

ユーロ圏総合PMI、4月も50超え1年ぶり高水準 

ビジネス

独サービスPMI、4月53.2に上昇 受注好調で6

ワールド

ロシア、軍事演習で戦術核兵器の使用練習へ 西側の挑
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが...... 今も厳しい差別、雇用許可制20年目の韓国

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    翼が生えた「天使」のような形に、トゲだらけの体表...奇妙な姿の超希少カスザメを発見、100年ぶり研究再開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    ウクライナがモスクワの空港で「放火」工作を実行す…

  • 6

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    単独取材:岸田首相、本誌に語ったGDP「4位転落」日…

  • 9

    マフィアに狙われたオランダ王女が「スペイン極秘留…

  • 10

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中