アメリカ長期金利の上昇材料そろい踏み 2%水準も視野に
米国債市場は今、FRBのタカ派姿勢、インフレ率の上昇、大量供給と悪材料がそろい踏み状態にあり、指標となる10年物利回りは約2年ぶりの水準に上昇する可能性がある。写真はドル紙幣。2017年6月撮影(2022年 ロイター/Thomas White)
米国債市場は今、米連邦準備理事会(FRB)のタカ派姿勢、インフレ率の上昇、大量供給と悪材料がそろい踏み状態にあり、指標となる10年物利回りは約2年ぶりの水準に上昇する可能性がある。
10年物利回りは6日、1.753%に跳ね上がった。昨年末には1.491%、12月20日には1.353%と低かったが、今では昨年3月につけた2020年2月以来の高水準、1.776%に迫っている。
アナリストによると、1.79%前後にあるチャート上の上値抵抗線を突破すれば、2%水準への上昇が視野に入りそうだ。
10年国債利回りは昨年後半にも何度か上昇したが、現水準に近づくと新型コロナウイルスの感染拡大や景気を巡る懸念によって頭打ちになった。利回りが相対的に高くなったことで、投資家が買いに入ったことも利回り上昇に歯止めをかけた。
しかし投資家は、今回はこれまでと状況が異なるのではないか、との思いを強めている。最大の要因は、FRBが全力でインフレと闘う構えであるように見受けられることだ。
昨年12月14-15日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が5日に公表されると、利回りは一段と上昇した。インフレ退治のため、利上げ前倒しに加えてバランスシートの縮小も話し合っていたことが分かったからだ。
ジェフリーズの短期金融市場エコノミスト、トム・サイモンズ氏は「バランスシートの縮小を放置し、FRBの(債券)購入をやめる未来を見据えた協議だ。市場はそうした事態に備え始めるだろう」と述べた。
この他にも、利上げを控えた社債の駆け込み発行ラッシュや、年末の「逃避買い」で国債利回りが低くなり過ぎた反動としての相場調整などが、利回りの上昇要因となりそうだ。
主要中銀による債券購入の縮小で、世界的に国債の需給が悪化することも予想されている。
タカ派のFRB
物価上昇圧力が当初考えられていた以上にしぶといことが分かってきたため、FRBは異例の金融緩和政策の解除を急ぐよう迫られている。新型コロナのオミクロン株が急拡大したことで供給の混乱に拍車がかかり、インフレ上昇圧力が増す可能性もある。
5日に発表されたオートマチック・データ・プロセッシング(ADP)の12月全米雇用報告も予想外に強い内容となり、利上げが正当化されることを示唆した。