緊急事態宣言解除で人材確保に悩む飲食業 「第6波」か「機会損失」か
東京・板橋区の住宅街にある居酒屋の店主は、店舗営業を再開するにあたり、冊子タイプのメニュー表をタブレット端末に変更することを検討しているという。除菌をしやすく、客との接触機会も減らすことができるとし、「感染対策の充実を採用のアピールポイントにしたい」と話す。
異業種間での取り合い
経済の回復過程では異業種間で人材の取り合いが起きるのも通例だ。
直近の日銀短観の雇用人員判断DI(「過剰」-「不足」)をたどると、全規模・全産業は昨年9月調査でマイナス6となった後、じりじりと不足超幅を拡大してきた。1日発表の最新9月調査では足元がマイナス17、先行きはマイナス20と不足超幅がさらに拡大していくと予測されている。
労働経済に詳しい日本総研の山田久・副理事長は、建設、宅配関連、コールセンター、介護サービスなどで人手不足感があり、飲食業界が不安定な中で一定数の人材がそうした業種に流れた可能性がある、と指摘。その上で「飲食業がコロナ前のビジネスモデルを再構築し、安い賃金で人を集めようとしても戻ってこないのではないか」と話す。
コンビニもライバルに
採用面では、今後はコンビニエンスストアなどの小売りが飲食業の強力なライバルになり得るとの声もある。
かねてコンビニは店舗運営の多くを留学生など外国人材に頼っていたが、出入国在留管理庁がまとめたデータによると、コロナ禍で2020年の新規入国留学生は前年に比べて6割減った。人材業界に詳しいリクルートジョブズリサーチセンターの宇佐川邦子センター長は「本来なら一気に人手不足になるところだったが、日本の学生や主婦などが入ってくれたおかげで穴が埋まった」という。
コンビニは自宅の近辺にあることが多く、シフトも融通が利きやすい。チェーン展開していれば他の場所にある店舗も選択肢に入る。前出の宇佐川氏は「働き方の工夫や早期に戦力化する工夫がすでにできていて、上手に時間を使いたい人のニーズにもマッチしている」と話す。
経済産業省と総務省がまとめたデータによると、全国に約60万ある飲食業の事業所のうち6割が従業員4人以下の零細企業となっている。個人経営に近い店では大手チェーンなどに比べて人材面でフレキシブルに対応できないのが実情。前出の板橋区の居酒屋の店主はこう話す。「これまでも努力してきたが、さらに工夫が必要だ」。
(杉山健太郎、取材協力:浜田寛子 編集:石田仁志)
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