イギリス、「移民頼み経済」から25年ぶり転換か EU離脱で試練の冬
英国では現在トラック運転手が10万人前後不足している。ガソリンスタンドには列ができ、スーパーでは食品の在庫切れが懸念され、食肉処理や倉庫業務に携わる労働者の不足も不安を引き起こした。
トラック運転手歴27年のクレイグ・ホルネスさんは「賃金を上げる必要がある。だから私たちが配送している物すべて、人々が店で買う物すべての値段も上がるはずだ」と語る。
賃金は既にうなぎ登りだ。求人広告では、重量貨物車両(HGV)1種免許を持つ運転手の年収が7万5000ポンド(10万2500ドル)。人材会社によると、前代未聞の高さとなっている。
不満の冬
中央銀行のイングランド銀行は今年9月に「エネルギーおよび財の価格動向を主因として」消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率が今年末に4%に達すると予想。過去最低水準にある政策金利を引き上げるための論拠が強まったとの見方を示した。
同行は、その証拠として「より広い分野で人材採用が難しくなり、深刻度合いも増している」と説明。「需要が予想以上のスピードで回復したことや、EU労働者の確保が難しくなったことなどの複合的な要因」が背景にあると分析した。
ジョンソン政権の閣僚らは、1970年代の「不満の冬」の再来を繰り返し否定しているばかりか、現在の問題の一因がブレグジットにあることさえ認めていない。70年代の英国は賃上げ要求とインフレ、電力不足の悪循環で不満が爆発し、79年のサッチャー首相誕生へとつながった。
ジョンソン氏は3日、こう述べた。「わが国は長期にわたって賃金上昇率が比較的低く、賃金と生産性は実質的に変化してこなかった。原因は、人と設備への投資を慢性的に怠ってきたことにあり、その結果が賃金の横ばいだ」と語った。
しかし、同氏は移民の減少と賃上げの組み合わせが、どのように賃金と生産性の停滞の解決に結びつくのかを説明しなかった。賃上げはインフレをあおり、その結果として実質賃金を目減りさせる。
物価上昇が英国経済にどんな影響を及ぼすかも不透明だ。英国は消費主導経済であり、欧州や世界に広がる供給網への依存も強めている。
識者からは、英国は「一周回って元に戻った」との声も出る。「欧州の病人」として1970年代にEUの前身に加わったが、離脱したことでまた、袋小路にぶつかるというのだ。EUの多くの政治家がそうした成り行きを望んでいるのは間違いない。
ジョンソン氏がどのようなレガシー(遺産)を残せるかは、この仮説が間違いだったと証明できるかどうか次第だろう。
(Guy Faulconbridge記者)
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