日本はデフレ、ではない? 「ディスインフレ」の影響を知る
しかし、ディスインフレーションでは物価上昇率はあくまでプラスに維持されたままであり、低水準に落ち着いた状況を示すため、中央銀行が物価動向を過熱的だと判断すれば、さらなる政策金利の引き上げが予想される。
■株価上昇のきっかけにもなる
その反面、物価上昇率がマイナスになっていないことに目を向ければ、ディスインフレーションをポジティブに捉えることもできる。
例えば、複数の先進国でデフレーションが進んでいるようなケースだ。この場合、低水準ながらも緩やかな物価の上昇を維持していることは根強い需要と経済の底堅さの裏付けであり、株価が上昇するきっかけにもなる。
現に、2020年以降のアメリカの物価上昇率は前年同月比1%前後を推移することが多く、ディスインフレーションと判断するに十分な状況だった。しかし、アメリカ株は2021年から過去最高値を更新するなど、かなり好調に推移している。
つまり、2021年のアメリカ市場は、ディスインフレーションと判断できる物価水準が株価には必ずしもネガティブに作用しない、または決定要因とならないことの証明になっていると見ることもできるのだ。
株式市場には鳥の目が必須
言うまでもなく、株価の変動にはさまざまな要因が複合的に絡み合っており、ディスインフレーションのみで語られるものではない。しかし、その「複合的」のなかには、物価の動向やそれを受けた中央銀行の金融政策による影響も当然含まれることになる。
GDPなど景況感を示す指標、雇用統計など雇用動向を示す指標、金利動向、為替動向......さらには投資家たちが抱く将来への展望など、株式市場を分析する際に考慮するべき要素は数多くある。
それらすべてを正確に把握できなくとも、普段から相場を俯瞰して見る癖をつけ、総合的な判断を下すよう心がけることが大切だ。そうした姿勢は、ひとつひとつの指標を適切に解釈することにも大いに力を発揮するだろう。
[執筆者]
石津大希(いしづ・だいき)
外資系投資顧問会社で株式アナリストとして勤務したのち独立。ファンダメンタルズ分析の経験を生かして、客観的データや事実に基づく内容を積極的に発信。市場で注目度の高いトピックを取り上げ、深く、そして、わかりやすく説明することを心がける。【かぶまどアワード2020】