最新記事

株の基礎知識

日本はデフレ、ではない? 「ディスインフレ」の影響を知る

2021年8月13日(金)11時15分
石津大希 ※株の窓口より転載

EtiAmmos-iStock.

<日本は長年にわたって物価が上昇せず、インフレからは程遠い景況感を示している。こんなときに注意したいのは、デフレではなくディスインフレ。ディスインフレーションとは何か、株価にどんな影響があるのか>

ディスインフレーションとは?

物価とお金の価値との関係を表す言葉として、「インフレーション(インフレ)」「デフレーション(デフレ)」という単語を耳にすることは多いだろう。

インフレ―ションとは、物価が継続的に上昇し、お金の価値が下がり続ける現象のことで、一方のデフレーションは、物価が継続的に下落し、お金の価値が上がり続ける現象を指す。

そして、この両者のどちらでもない状態が「ディスインフレーション」と呼ばれる。

つまり、ディスインフレーションとは、物価上昇率が低下し、インフレーションの進行は抑えられているが、デフレーションにはなっていない状態だ。例えば、物価上昇率が5%から1%まで低下するなど、プラスを維持しながらも低水準な状態が続くとディスインフレーションと判断される。

社会の消費意欲は十分高い状況ではあるものの、さまざまな要因により物価上昇のペースにブレーキがかかると、ディスインフレーションが引き起こされるというわけだ。

■ディスインフレーションになる流れ

ディスインフレーションはどのようにして起こるのだろうか。一般的に多いのは次のような流れだ。

1)景気が良くなり、社会の消費意欲が高まることでインフレーションが進行する
2)中央銀行が過度な物価上昇を抑えるために金融引き締め政策を実施する
3)インフレーションのペースが鈍化し、ディスインフレーションに突入する

基本的に、モノの価値は需要と供給のバランスで決まる。好景気になるとモノに対する需要が供給よりも強くなり、物価が上昇する。すると、中央銀行は過度な物価上昇による社会の混乱を防ぐべく、政策金利の引き上げなどの金融引き締め政策を実施。物価上昇率を抑えようとする。

こうして物価上昇が緩やかになれば、デフレーションにはならないまでも、ディスインフレーションだと判断されるのだ。

ディスインフレーションが株価に与える影響

ディスインフレーションになると株価にはどのような影響があるのだろうか。あくまでケースバイケースではあるが、マーケットには相反する2つの考え方が存在する。

■金融引き締めで株価は下落する

ひとつは、「ディスインフレーションにより株価が下落する」という考え方だ。過去の事例を見ても、中央銀行が政策金利を引き上げると、株価はその後に大きく下落する傾向にある。

ディスインフレーションは多くの場合、金融引き締め政策によって引き起こされる。金融引き締め政策とは、具体的には中央銀行が政策金利を引き上げたりすることで通貨の流通量を減らし、消費を抑制しようとすることだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏、米軍制服組トップ解任 指導部の大規模刷

ワールド

アングル:性的少数者がおびえるドイツ議会選、極右台

ワールド

アングル:高評価なのに「仕事できない」と解雇、米D

ビジネス

米国株式市場=3指数大幅下落、さえない経済指標で売
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ウクライナが停戦する日
特集:ウクライナが停戦する日
2025年2月25日号(2/18発売)

ゼレンスキーとプーチンがトランプの圧力で妥協? 20万人以上が死んだ戦争が終わる条件は

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 3
    メーガン妃が「アイデンティティ危機」に直面...「必死すぎる」「迷走中」
  • 4
    1888年の未解決事件、ついに終焉か? 「切り裂きジャ…
  • 5
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 6
    ソ連時代の「勝利の旗」掲げるロシア軍車両を次々爆…
  • 7
    深夜の防犯カメラ写真に「幽霊の姿が!」と話題に...…
  • 8
    私に「家」をくれたのは、この茶トラ猫でした
  • 9
    飛行中の航空機が空中で発火、大炎上...米テキサスの…
  • 10
    トランプが「マスクに主役を奪われて怒っている」...…
  • 1
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 2
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される【最新研究】
  • 3
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン化」の理由
  • 4
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 5
    動かないのに筋力アップ? 88歳医大名誉教授が語る「…
  • 6
    朝1杯の「バターコーヒー」が老化を遅らせる...細胞…
  • 7
    7年後に迫る「小惑星の衝突を防げ」、中国が「地球防…
  • 8
    ビタミンB1で疲労回復!疲れに効く3つの野菜&腸活に…
  • 9
    「トランプ相互関税」の範囲が広すぎて滅茶苦茶...VA…
  • 10
    墜落して爆発、巨大な炎と黒煙が立ち上る衝撃シーン.…
  • 1
    週刊文春は「訂正」を出す必要などなかった
  • 2
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 3
    【一発アウト】税務署が「怪しい!」と思う通帳とは?
  • 4
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    1日大さじ1杯でOK!「細胞の老化」や「体重の増加」…
  • 7
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 8
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 9
    世界初の研究:コーヒーは「飲む時間帯」で健康効果…
  • 10
    「DeepSeekショック」の株価大暴落が回避された理由
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中