バイデンの電動バス促進政策、中国メーカー排除が足かせに
GILLIGとNFI、ノババスはずっとディーゼルバスを製造してきた企業で、近年になってハイブリッド式や電動式、燃料電池式のモデルを売り始めた。ほかにもカナダのライオン・エレクトリック、グリーンパワー・モーターなどのメーカーがあるが、まだ輸送機器事業の強化に乗り出したばかりだ。
バイデンに近い有力ロビー企業と契約
BYDの親会社は香港と深センに上場しているものの、同社によると株式の60%は米国投資家が保有している。著名投資家ウォーレン・バフェット氏も直近の年次報告で8.2%の持ち分があることを明らかにした。
それでも19年の米議会報告書で、BYDが中国国有投資ファンドと中国政府の助成金によるメリットを享受して、同社の供給網の一部となったバッテリーセル工場を建設した実態が詳しく記されると、鉄道車両を手掛ける中国国有の中国中車(CRRC)とともに修正国防授権法の標的になってしまった。
この法律は、来年から中国の国有企業もしくは中国政府の管理下にある企業からのバスおよび鉄道車両購入に米政府の補助金を利用できなくなると定めている。
報告書は「中国(政府)はEVバッテリー産業に12年以降で100億ドル余りを投じてきており、それは電動乗用車1台当たりで約1万ドル、電動バスならもっと多額の補助金支給に相当する」と指摘した。
BYDノース・アメリカは、報告書の内容を否定した上で、自分たちは完全に別の事業体であり、中国政府から直接助成金は受け取っていないと主張。米政府の補助金対象除外決定の撤回を求める運動の準備を進めている中で、労組を尊重する経営を行っている点も熱心にアピールしている。
米政府が公表しているロビー活動記録を見ると、BYDは既にバイデン氏や民主党と近い有力ロビー企業のキャピタル・カウンセルと契約を結んでおり、議会やホワイトハウスに対して修正国防授権法の手直しを説得する手段として活用するもようだ。
BYDのロビイストになったのは、大統領選でニューヨークにおけるバイデン氏の選対陣営を取り仕切ったロバート・ダイヤモンド氏と、下院民主党と太いパイプを持つリンドン・ブーザー氏。キャピタル・カウンセルには第1・四半期に5万ドルが支払われた。
さらに議会の懸念を和らげようと法律事務所のオメルベニー・アンド・マイヤーズを起用し、BYDは国防授権法で想定されているような中国国有企業とは異なると論じるリポートも書かせている。
労組もBYDを援護射撃している。「板金工組合」の下部組織を統括するウィリー・ソローザノ氏は「この手の問題は中国が雇用を奪っているという話ばかりだが、(BYDは)雇用を創出し、人々にキャリアを提供している。みんな充実した生活を手に入れ、家を買う人もいる。地域社会全体が恩恵を受けている」と述べ、BYDで働く労組メンバーの平均時給は20ドルだと指摘した。
地方の公共交通運営団体からは、BYDの排除はプラスに働かないとの声が聞かれる。
ロサンゼルス郡地域に公共輸送サービスを提供し、既に保有するバス約85台のほぼ全てをBYDの電動車に切り替えたアンテロープ・バレー・トランジット・オーソリティーのメイシー・ネシャティ最高責任者は、最も競争力のあるBYDを市場から追い出せば、残ったメーカーが共謀して価格をつり上げる事態になると訴えた。
(Jarrett Renshaw記者、Tina Bellon記者)
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