最新記事

米中対立

バイデンの電動バス促進政策、中国メーカー排除が足かせに

2021年7月19日(月)09時31分

GILLIGとNFI、ノババスはずっとディーゼルバスを製造してきた企業で、近年になってハイブリッド式や電動式、燃料電池式のモデルを売り始めた。ほかにもカナダのライオン・エレクトリック、グリーンパワー・モーターなどのメーカーがあるが、まだ輸送機器事業の強化に乗り出したばかりだ。

バイデンに近い有力ロビー企業と契約

BYDの親会社は香港と深センに上場しているものの、同社によると株式の60%は米国投資家が保有している。著名投資家ウォーレン・バフェット氏も直近の年次報告で8.2%の持ち分があることを明らかにした。

それでも19年の米議会報告書で、BYDが中国国有投資ファンドと中国政府の助成金によるメリットを享受して、同社の供給網の一部となったバッテリーセル工場を建設した実態が詳しく記されると、鉄道車両を手掛ける中国国有の中国中車(CRRC)とともに修正国防授権法の標的になってしまった。

この法律は、来年から中国の国有企業もしくは中国政府の管理下にある企業からのバスおよび鉄道車両購入に米政府の補助金を利用できなくなると定めている。

報告書は「中国(政府)はEVバッテリー産業に12年以降で100億ドル余りを投じてきており、それは電動乗用車1台当たりで約1万ドル、電動バスならもっと多額の補助金支給に相当する」と指摘した。

BYDノース・アメリカは、報告書の内容を否定した上で、自分たちは完全に別の事業体であり、中国政府から直接助成金は受け取っていないと主張。米政府の補助金対象除外決定の撤回を求める運動の準備を進めている中で、労組を尊重する経営を行っている点も熱心にアピールしている。

米政府が公表しているロビー活動記録を見ると、BYDは既にバイデン氏や民主党と近い有力ロビー企業のキャピタル・カウンセルと契約を結んでおり、議会やホワイトハウスに対して修正国防授権法の手直しを説得する手段として活用するもようだ。

BYDのロビイストになったのは、大統領選でニューヨークにおけるバイデン氏の選対陣営を取り仕切ったロバート・ダイヤモンド氏と、下院民主党と太いパイプを持つリンドン・ブーザー氏。キャピタル・カウンセルには第1・四半期に5万ドルが支払われた。

さらに議会の懸念を和らげようと法律事務所のオメルベニー・アンド・マイヤーズを起用し、BYDは国防授権法で想定されているような中国国有企業とは異なると論じるリポートも書かせている。

労組もBYDを援護射撃している。「板金工組合」の下部組織を統括するウィリー・ソローザノ氏は「この手の問題は中国が雇用を奪っているという話ばかりだが、(BYDは)雇用を創出し、人々にキャリアを提供している。みんな充実した生活を手に入れ、家を買う人もいる。地域社会全体が恩恵を受けている」と述べ、BYDで働く労組メンバーの平均時給は20ドルだと指摘した。

地方の公共交通運営団体からは、BYDの排除はプラスに働かないとの声が聞かれる。

ロサンゼルス郡地域に公共輸送サービスを提供し、既に保有するバス約85台のほぼ全てをBYDの電動車に切り替えたアンテロープ・バレー・トランジット・オーソリティーのメイシー・ネシャティ最高責任者は、最も競争力のあるBYDを市場から追い出せば、残ったメーカーが共謀して価格をつり上げる事態になると訴えた。

(Jarrett Renshaw記者、Tina Bellon記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国人とみられるハッカー集団、米政府機関システムに侵入
・【2+2】米中対立から距離を置く韓国、のめり込む日本
・米下院議長ペロシ、北京五輪の「外交的ボイコット」呼び掛け


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

バイデン氏、ガザは「人道危機」 学生の怒りに理解

ワールド

中国、日米欧台の工業用樹脂に反ダンピング調査 最大

ワールド

スロバキア首相銃撃事件、内相が単独犯行でない可能性

ビジネス

独メルセデス、米アラバマ州工場の労働者が労組結成を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の「ロイヤル大変貌」が話題に

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    米誌映画担当、今年一番気に入った映画のシーンは『…

  • 5

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 6

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 7

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 8

    「すごく恥ずかしい...」オリヴィア・ロドリゴ、ライ…

  • 9

    中国の文化人・エリート層が「自由と文化」を求め日…

  • 10

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 3

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    「隣のあの子」が「未来の王妃」へ...キャサリン妃の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中