ベネズエラ、ハイパーインフレ回避で暗号資産に走る市民
コロンビアで料理宅配ドライバーとして働くベネズエラ人のパブロ・トロさんは、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術に特段興味があるわけではない。写真は15日、コロンビアのボゴタで配達仲間いあいさつするトロさん(2021年 ロイター/Luisa Gonzalez)
コロンビアで料理宅配ドライバーとして働くベネズエラ人のパブロ・トロさんは、暗号資産(仮想通貨)やブロックチェーン技術に特段興味があるわけではない。しかし、家族に送金するたびに間接的にデジタルトークンを利用している。
2019年にコロンビアに移住したトロさんが送金時に使っているのは「Valiu(バリュー)」と呼ばれるアプリ。トロさんは、コロンビアペソで受け取った賃金をベネズエラの銀行の口座に現地通貨ボリバル建てで預金するのだが、ハイパーインフレに見舞われ、米国から制裁を科されてベネズエラ経済がどん底状態にある中で、普通のやり方ではこの取引はすんなりといかない。
ただ、バリューを通じてペソで仮想通貨を購入すれば、世界的な個人間の仮想通貨取引プラットフォームのローカルビットコインで、現地通貨建てのトークンに交換できる。
現在もベネズエラ移民の間で主流となっているのは、非公式の外為取引所を通じた送金だ。ところが、トロさんから見ると、そうした取引所よりもバリューの方が信頼度は高い。
トロさんは「ベネズエラで停電になったり、インターネットサービスが停止したりすれば、誰かの家族に送金するのにかかる時間に多大な影響を及ぼす。(今は)ベネズエラで停電が起きているか、あるいは携帯サービスがダウンしているかを気にする必要がない」と話す。
彼がコロンビアに移住したのは、ベネズエラで就いていた大学の守衛の仕事でもらう月給では、1日分の食料さえ満足に買えなかったためだ。
仮想通貨採用で世界3位に
ハイパーインフレと米国の制裁に経済が打ちのめされたベネズエラにあって、伝統的な銀行システムが取り扱っていた様々なサービスを提供する新たな手段として出現したのが仮想通貨と言える。利用者や専門家の話では、送金以外にも、賃金をインフレから守ったり、通貨急落が続く中で企業がキャッシュフローを適切に管理したりするツールとして役立っている。
ブロックチェーン分析企業・チェーンアナリシスは昨年公表したリポートで、独自に算出した「世界仮想通貨採用指数」におけるベネズエラのウエートを第3位に設定した。ボリバル建て取引が高水準に上ることが主な理由だ。