G7発表の一帯一路対抗「B3W」 関係国歓迎も西側各国の有言実行が鍵
G7が中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗して打ち出した途上国向けのインフラ支援構想は、中国の影響が直接及ぶ国々から歓迎を受けている。写真は2019年4月、北京で開かれた「一帯一路」に関するフォーラムで撮影(2021年 ロイター/Jason Lee)
主要7カ国(G7)が中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗して打ち出した途上国向けのインフラ支援構想「Build Back Better World (B3W)」は、中国の影響が直接及ぶ国々から歓迎を受けている。ただ西側諸国がどれほど本気でプロジェクトに関与するかを巡り疑念も残っており、それを克服していくことが主要国の課題だ。
B3Wは英国で週末開かれたG7首脳会議(サミット)で合意。詳細はほとんど固まっておらず、実現には数年を要する見通しだ。
ただ今回の合意は、途上国における中国の覇権拡大に対するG7の挑戦だと見なされている。
アジア諸国はB3Wへの協力に前向きな姿勢を示しているが、G7の課題は中国の実績に匹敵するスピードで投資を進められるかどうかだ。
シンガポールのISEASユソフ・イシャク研究所のディレクター、チョイ・シン・クォック氏は、東南アジア諸国は中国への過度の依存を警戒しているため、B3Wが入り込む余地はあると指摘。ただ同時に、B3Wは複数国による取り組みという性質上、一帯一路より複雑でスピードも遅くなる可能性があるとみている。
「一帯一路プロジェクトに参加した東南アジア諸国は、これまで容易に取引が結べたから、という理由で参加したケースが多い。何らかの主義主張や地政学的な理由ではない」という。
B3Wのプロジェクトは、G7諸国とその同盟国が、天候、健康、デジタル技術、性の平等といった分野で民間セクターの資本を動員して行うことになる。
インドネシアのマヘンドラ・シレガル外務副大臣はロイターに対し、同国には共同投資が可能なプロジェクトが複数あり、先進諸国との協力を強化する準備はあると述べた。
ただ、インドネシアの一帯一路プロジェクトで主な窓口となる海事・投資調整省の報道官はロイターに対し、先進国はインドネシアの開発への関与に消極的だった過去を改める必要があると指摘。「われわれはB3Wを歓迎する。しかしもちろん、今回は有言実行を期待する」と述べた。
政治ではなく投資
中国政府は昨年、一帯一路プロジェクトの約2割が新型コロナウイルス大流行の影響を受けたとしている。また、複数の国々はコストや主権侵害、汚職などを理由に一帯一路プロジェクトの見直し、キャンセル、関与の縮小を求め、中国は一部の計画を後退させざるを得なくなった。
ただアナリストや政策立案者によると、アジアの長期的な開発ニーズは巨大で、中国の覇権拡大に対する懸念といった政治的要因を凌駕しそうだ。