テスラ、起こるべくして起きた「中国トラブル」
テスラが販売台数の急増に見合うサービス態勢を整えることに四苦八苦していた中、中国でテスラへの反感がこれまでにじわじわと蓄積されていた以上、起こるべくして起きた事態とも言える。上海のテスラ充電施設で3月撮影(2021年 ロイター/Aly Song)
テスラが販売台数の急増に見合うサービス態勢を整えることに四苦八苦していた中、中国でテスラへの反感がこれまでにじわじわと蓄積されていた以上、起こるべくして起きた事態とも言える。
テスラはメディアによる一斉攻撃を浴び、規制当局の「お叱り」も受けた。これは外国の大手ブランドにとって中国がいかに危険な場所になり得るか、そして国家の厳しい統制を受けたメディアが批判姿勢に転じた場合、たった1つの苦情案件処理の間違いがいかに大変な危機に転じ得るかを物語っている。
またテスラと言えば業界の慣習を顧みないことで知られ、その象徴的存在が創業者のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)だ。めったに誤りを認めない企業文化は米国でこそ、それなりのファンを獲得しているものの、中国では逆効果でしかない。マスク氏の名声ゆえに、中国政府は外国自動車メーカーとして初めてテスラに地元企業と合弁なしの事業展開を認めたのは確かだが、今やテスラはずっと長い歴史を持つライバルメーカーたちが何年も前に得た教訓を学びつつある。
テスラが直面するトラブルは、主に同社の北米事業に関係しているとはいえ、マスク氏や経営幹部らが認識してきた問題の大きさも浮き彫りにしている。ハードウエアに不具合が生じた場合に車両を修理する能力が、猛スピードで伸びる販売台数に圧倒されてしまったのだ。
カークホーン最高財務責任者(CFO)は1月、投資家に対して「サービスの拡充がテスラの将来戦略にとって本当に大事になっている」と認めた。
では今週、テスラはどんな事態に見舞われたのか。発端は上海国際モーターショーが始まった19日、ブレーキが効かないという苦情に対するテスラ側の対応に怒った1人の顧客女性がテスラの展示車両の屋根に上り、不満を叫んだことだ。この動画はソーシャルメディアで拡散された。
騒動がさらに拡大したのは、テスラの対外関係担当バイスプレジデント、グレース・タオ氏がこの女性が「やらせ」ではないかと疑問を呈した後だった。
タオ氏は地元メディアのインタビューで「事実は分からないが多分、彼女はかなりのプロで、(誰かが)背後にいるはずだと思う。われわれは妥協するつもりはない。これは新車開発のプロセスにすぎない」と発言。直後にテスラはあわてて火消しに走り、報道の撤回を求めてきた、とこのメディアが20日、メッセージアプリの微信(ウィーチャット)で明かした。