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アナログ・デバイセズ

デジタル・ヘルスケアが医療の概念と価値を変える

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2021年3月31日(水)10時00分
文・富井和司

ウェアラブルVSMプラットフォーム

「生の生体信号」の医療機関や研究開発機関への提供を可能にするウェアラブルVSMプラットフォーム

コロナが加速させた医療の長期的ニーズへの解決策。

 アナログ・デバイセズの技術が集約されたウェアラブル・デバイスは、コロナ禍による短期的な医療の変化への対応だけでなく、より長期的な医療現場のニーズをも満たす可能性が高い。そもそもコロナ以前から、医療の世界では医療費の高騰という問題が深刻化している。2018年におけるアメリカの医療費は約3兆6000億ドルに上るが、米保健福祉省によれば27年にはこれが約6兆ドルにまで増加する見通しだという。

 そのなかで、デジタル技術を利用して病気を「在宅」のまま予防、予見、管理する体制が拡大することは、医療提供の効率化やスピードの向上、さらには低コスト化につながる。「新型コロナの感染拡大は、医療現場が従来から直面していた課題をより加速させた面があり、何かしらの解決策が必要です。医療費の高騰を防ぐには、健康寿命を伸ばすことが重要だと思いますが、そのためには日常で健康に気を配れる環境づくり、そして異変が生じたときにはすぐに医療にアクセスして、早期かつ軽症の段階で疾患を正確に診断していく仕組みが大事です」(山口氏)

 アナログ・デバイセズはウェアラブル・デバイスの分野とともに、画像診断機器と体外診断機器を加えた3分野をデジタル・ヘルスケアの柱に据える。画像診断機器はデジタル化の発展によってデータ量が増し、より高精細な画像で診断できるようになり、近年ではAIによる診断補助技術も急速に進歩している。一方、患者の血液等を一例に病変を特定する体外診断は、これからの技術的革新が見込まれる分野であり、各種の機器やセンサーの開発等により、ゲノム解析を通した個別化医療等の加速が期待されている。将来的にはより正確に悪性腫瘍等を発見できるだけでなく、遺伝子情報から今後発症しうる疾患を未然に予見するといったことも可能になるとされる。

 こうした3分野の取り組みから見えてくるのは、健常時からの健康支援や慢性疾患患者の重症化予防、そして異変や急変時の迅速・正確な診断で早期に治療を開始し、少しでも健康寿命を延伸させるというアナログ・デバイセズのミッションである。

 さらに同社が提供するソリューションは、医療費の高騰を抑えるだけではない。デジタル・ヘルスケアによって、医療リソースの異なる都市部と地域の格差是正を図るというビジョンも有している。

「すでにインフラとして整いつつあるICTを拡充し、地方でも専門医や先端機器が揃う都市部と同等の医療やケアを受けられるようにしたい」と山口氏は展望する。

 新型コロナ時代の到来によって否応なく加速しているデジタル・ヘルスケアは、たとえコロナが収まったとしても後戻りすることはない。現在の患者たちのニーズに応えることに加え、より大きな社会の変化に対応するためにも、この分野への注目は今後さらに高まっていくだろう。

 さらに、デジタル・ヘルスケアの進展に弾みをつけていくうえで重要なのは、こうしたソリューションを開発する企業と、医療現場の協力関係の強化である。現在、コロナ禍で目の前の患者への対応に追われている医療従事者は少なくないが、デジタル化によってもたらされる新たな医療には無限の可能性がある。そのなかで、アナログ・デバイセズが世界で積み上げてきた知識と経験は、医療機関や他社と一体となって作り上げるソリューションの、核となる技術を提供してくれるはずだ。

アナログ・デバイセズのウェアラブルデバイスで取得可能な情報の一例

上の写真のようなウェアラブル・デバイスで取得可能な情報の例。左のグラフでは、脈波信号や加速度センサーからの体動情報、脈波信号から算出された脈拍数、皮膚温度などを同時に表示。右のグラフのI誘導での心電図は、計測ツールを使ってより高精細な波形も取得できる。。情報はPC等で確認しながら保存できるほか、デバイス側でストレージに保存することも可能。

ウェアラブル・デバイスで取得可能な情報のグラフ

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