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スニーカー転売

ナイキ北米副社長のクビを飛ばした転売スキャンダル

2021年3月9日(火)19時00分
デレク・ジョンソン

ナイキの「エア・ジョーダン」はスニーカー愛好家垂涎の的 Derreck Johnson-SLATE

<スニーカー転売専門のオンライン市場やソーシャルメディアの成長により、転売ビジネスがますます活況を呈している>

スニーカーの「高額転売」は、昔からうまみのあるビジネスだった。時間をかけて情報を入手し、仕入れの手間を惜しまなければ、手軽に大きな利益を得ることができる。

近年は、スニーカー転売専門のオンライン市場やソーシャルメディアの成長により、転売ビジネスがますます活況を呈している。金融サービス大手コーエンの調査部門コーエン・リサーチによると、スニーカー転売市場の規模は、2030年には300億ドルに達する可能性があるという。

若い野心家がこうした商売にのめり込むのは、意外なことではない。19歳のジョー・ヘバートもそんな若者の1人だった。ブルームバーグ・ビジネスウィーク誌が2月25日、この若者を取り上げた記事を掲載した。「儲かるという確証があれば、全力で突き進む」と、ヘバートは同誌のジョシュア・ハント記者に語っている。「それが私のやり方だ」

ヘバートは、とてつもない量の新品スニーカーを自らのインスタグラムで披露している。転売市場で一番人気のナイキの「エア・ジョーダン」やアディダスの「イージーブースト」も山積みになっている。エア・ジョーダンを転売すれば、安く見積もっても1足当たり50~100ドルの利ざやが期待できる。

こうした画像の多くで、ヘバートは写真を加工して自分の顔が分からないようにしている。この商売が胸を張れるものでないことは、少なくとも理解していたようだ。

ヘバートが住んでいるのは、オレゴン州ポートランド。ナイキが近郊に本社を置き、アディダスも市内に北米の拠点を設けている。「しかるべき人たちを知っていれば、ここはシューズの転売を行うのにうってつけの町だ」と、ヘバートはハントに語っている。

母親名義のカード明細書

スニーカー転売ビジネスでは、レア物のスニーカーを入手するのに役立つ人脈がものをいう。経験豊富で抜け目ない転売屋は、そうした人脈を徹底的に隠すものだ。

その点、ヘバートはかなり脇が甘かった。あるとき、ハント記者に電話をかけた際に用いた電話番号はアン・ヘバートという人物のものだった。ハントの取材により、この人物はナイキに25年間勤めていて、当時は北米地区担当副社長の職にあったアン・ヘバートと同一人物だと判明した。

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