最新記事

日本経済

日本企業の6割がコロナ影響終息見込む 素材産業の3割超で事業転換

2021年3月18日(木)10時31分

ロイター企業調査によると、新型コロナウイルスによる事業への影響がすでに終息 あるいは遅くとも数カ月先で終息するとの見方が、半年前から大幅に増加し6割を超えた。都内で2020年11月撮影(2021年 ロイター/Issei Kato)

3月のロイター企業調査によると、新型コロナウイルスによる事業への影響がすでに終息 あるいは遅くとも数カ月先で終息するとの見方が、半年前から大幅に増加し6割を超えた。コロナ禍が1年以上続く下で、事業撤退・縮小部門と拡大・新設部門を設けて事業転換を図る企業は、素材産業やサービス業で3割前後にのぼっている。

調査期間は3月3日から12日まで。発送社数は482社、回答社数は230社程度だった。

昨年9月の調査では、コロナによる事業への影響は「終息のめどが立たない」との回答が53%を占めていたが、今回は36%に減少。「すでに終息」「終息しつつある」「今がピーク」との回答は合わせて30%で、9月の16%から大幅に増えた。「数カ月先に終息」との回答34%も合わせて64%が終息感を感じている。

事業への影響は企業にビジネスモデルの転換を迫るものだった。中でも素材産業ではそうした動きが活発だ。

「繊維・紙・パルプ」では58%の企業で、「鉄鋼・非鉄」でも40%で撤退や縮小する部門が「ある」と回答。「繊維染色事業」(繊維)や「コモディティーの低収益事業」(非鉄金属)の縮小・撤退があげられた。このほか「基礎研究部門」(化学)や「開発等の一部を手がけていた子会社の解散」(機械)などの事例もあった。

非製造業では、コロナ禍で打撃を受けた飲食や宿泊やサービスといった分野で35%、「小売」「運輸」でも3割程度で事業の撤退・縮小を行った部門があるとの回答だった。運輸では「空港事務所の閉鎖」や利用客減少に伴う事業資産の整理・縮小」のほか、「交通事業の減便」、「旅行関連事業縮小」などが対象となった。

拡大・新設した部門が「ある」との回答が目立ったのも素材産業で、「繊維・紙・パルプ」や「化学」で4割程度を占めた。「半導体、電気自動車関連事業への取組み」(紙・パルプ)や「デジタル」「宇宙」(いずれも繊維)といった事例があがった。

対して「加工型」産業では1割にも満たなかったが、中には「原価低減推進部門」(輸送用機器)を新設したり、「経営戦略部門」(電機)を新設拡大する動きもある。 非製造業では「テイクアウト部門」(小売)や「倉庫賃借」(運輸)に乗り出すなど、1─2割の企業で拡大・新設の動きがみられた。

ただ、全体でみると、撤退・縮小した部門が「ある」と回答した企業は19%。一方、拡大・新設した部門が「ある」との回答は15%で、事業転換の動きは鈍い。

雇用者については、過半数の企業が正規雇用でも非正規雇用でもコロナ前と人数にさほど変化がないと回答。「雇用調整助成金で何とか維持している」(サービス)状況だ。

しかし、正規雇用者の人数が「減少した」との回答は11%と少ないものの、非正規雇用者数は「減少」が24%と、正規の倍以上にのぼる。正規雇用者の人数は変えずに、「生産量に応じた通常の調整」(輸送用機器)など需要減に対応した人員調整を非正規で行っている企業が多い。「コロナの影響でホテル部門の宴会用の給仕係のアルバイトなどを減らしている」(運輸)といった例もあった。

(中川泉 グラフィック作成:照井裕子 編集:田中志保)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2021トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・中国人富裕層が感じる「日本の観光業」への本音 コロナ禍の今、彼らは何を思うのか
・世界の引っ越したい国人気ランキング、日本は2位、1位は...


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

テスラ車販売、3月も欧州主要国で振るわず 第1四半

ビジネス

トランプ氏側近、大半の輸入品に20%程度の関税案 

ビジネス

ECB、インフレ予想通りなら4月に利下げを=フィン

ワールド

米、中国・香港高官に制裁 「国境越えた弾圧」に関与
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大はしゃぎ」する人に共通する点とは?
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 6
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 7
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 8
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中