アメリカの対中制裁、世界の政府系ファンドや年金基金を直撃
ブラックリスト対象企業の株は、カナダ第2位の資産規模を持つ年金基金であるケベック州貯蓄投資公庫(CDPQ)、カナダ公的年金投資委員会、オランダに拠点を置く独立系年金運用会社PGGM、オランダ公務員年金基金を運用するAPGアセット・マネジメントなども保有している。
世界の株式市場における中国株のウエートが近年高まっていることを背景に、SWFは中国株投資を拡大してきた。そのSWFに対して、まさに冷や水を浴びせたのが米国の投資禁止命令や、さらには華為技術(ファーウェイ)ないし動画投稿アプリのTikTok(ティックトック)が中国政府のスパイ活動に関与しているとの米政府の主張だ。こうした禁止命令や米政府の主張は、ハイテク分野が米中の地政学的な対立における主戦場の1つになっている状況を物語る。
中国政府のアリババ規制でも痛手
バイデン大統領の今後の方針がまだ明確になっていない中で、チャイナテレコム、チャイナモバイル、シャオミ、CNOCCの株価は昨年11月以降、あるいは今月に入って12-22%の幅で下落した。
SWFの中国投資(CIC)でかつてマネジングディレクターを務めたウィンストン・マー氏は「売られた株の一部は米国以外の投資家が押し目で拾うかもしれないが、彼らが全部を吸収するのは難しいだろう」と述べた。
中国株を保有する機関投資家が翻弄されているのは、米国だけのせいでもない。昨年11月にはアリババ傘下の金融会社アント・グループが計画していた新規株式公開(IPO)に、中国政府が直前になって待ったを掛け、アント株の3割強を保有するアリババの時価総額が25%余り目減りする場面があったからだ。アリババは世界の時価総額トップ10銘柄の1つで、幅広いSWFや年金基金に保有されている。
米証券取引委員会(SEC)のデータによると、スイス中銀は昨年9月時点でアリババ株の保有が14億ドル相当と、それまでの2年間で2倍に膨らませていた。その後の11月の急落で保有価値がおよそ3億5000万ドルも消失した格好だ。ただ今月に米政府がアリババを投資禁止対象に追加するのを見送ると、同社株は値下がりのおよそ半分を取り戻している。
(Marc Jones記者、Tom Arnold記者)

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