著名エコノミスト9人による次期大統領への助言──コロナで深刻な打撃を被った米経済への処方箋は?
RX FOR AN AILING ECONOMY
R&D投資で科学技術大国の復活を目指す
■ジョナサン・グルーバー(マサチューセッツ工科大学教授、経済学)
次期大統領には、第2次大戦後のアメリカを偉大にした歴代大統領を見習ってほしい──そう言うのは、オバマ政権による医療保険制度改革の骨格作りに参加したジョナサン・グルーバーだ。「アメリカ政府は戦後の数十年にわたり、公的なR&D(研究開発)予算をGDPの2%にまで増やし、科学教育に大規模な投資を行った。その成果がさまざまな先端技術であり、世界史上最も偉大な中間層の創出だった」
しかし、その後のR&D関連予算は他の先進諸国を下回ってきた。「結果として経済成長のペースは落ち、今では技術開発でも雇用の創出でも競合諸国に後れを取っている」と、グルーバーは言う。「それでもR&D予算をGDPの0.5%にまで増やし、一方で科学教育の拡充に総力を挙げれば、400万の良質な雇用が生まれ、アメリカは再び世界の技術革新の推進力になれる」
ただし政府の資金は、既にハイテク産業の集積している東西の沿岸部諸州に偏ってはいけない。なぜなら「次なる技術革新のハブとなるに足るスキルや高等教育機関があり、しかるべき生活の質を提供できる場所は国内に100以上もある」からだ。「政府資金の分配に当たっては、そうした場所を競わせるべきだ」と、グルーバーは言う。
失業者にもせめて最低賃金並みの給付を
■ロンダ・ボンシェイシャープ(「女性による科学・平等・人種研究所」創設者、経済学者)
わずかな失業給付で生活を維持するのに四苦八苦している世帯や、学校を出ても働き口のない子供を抱えて困っている家庭には何らかの救済措置が必要だ。人権派の活動家ロンダ・ボンシェイシャープはそう訴える。
例えば、わが子が成人に達しても、職がなければ26歳までは扶養家族として扱える制度。一度は就職したけれど失業して家に戻ってきた子や、まだ大学在学中の(あるいは卒業したけれど就職できない)子を26歳までは扶養家族と認め、景気対策で税控除の対象が広がった場合には、その恩恵を受けられるようにするような仕組みだ。
公的な失業給付も手厚くし、最低でも週に290ドル(連邦政府の定める最低賃金で1週間フルに働いた場合の賃金に相当)を給付すべきだと提案している。CNBCの報道によれば、現状では21の州で失業給付金が時給7.25ドル(連邦政府の定める最低賃金)に届いていない。だからボンシェイシャープは現実的な対策として、連邦政府の定める最低賃金にはこだわらず、その人が失業以前に稼いでいた金額と住んでいる州で定められた失業給付金額の中間値に相当する現金を給付するよう提案している。
さらにボンシェイシャープは、新型コロナウイルス対策に関連する費用(密集を避けるためのオフィスの改装費など)の捻出に困る小規模企業への積極的な助成も求めている。