独り勝ちのテスラ株 時価総額で日本の自動車メーカー上場9社合計を抜く
「テスラのビジネスモデルは大手自動車メーカーとは根本的に違う。それが株価を大きく押し上げている」と指摘するのはSBI証券の遠藤功治企業調査部長だ。車両購入後に無線でソフトウエアをアップグレードして性能を高めて顧客に課金するほか、CO2(二酸化炭素)排出量ゼロのEV特化を活かし、単独では環境規制をクリアできず罰金を迫られる競合他社にクレジット(排出枠)を売って利益を得てもいる。
販売手法も評価されている。コロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)中は人々が外出できず、店舗販売中心の自動車メーカーは売上げを大きく落とした。一方のテスラは昨年からネット販売を本格化。「今までは考えられなかった『車をワンクリックで買う』という世界を実現しており、成長期待を後押ししている」(別の国内証券)という。
成長ストーリー見えない日本車メーカー
もっとも、日本車メーカーがテスラに倣えば市場からの評価・期待が高まるかというと、必ずしもそうではないようだ。EVの採算性はまだ低く、米中摩擦を踏まえると中国市場への深入りはリスクとの見方もある。販売店網の見直しもすぐには難しい。
調査会社TIWの高田悟シニアアナリストは「トヨタはバッテリーなどの技術を磨き、売れて儲かる電動車をつくらなければならない。日産はまず縮小均衡を図らないと評価されない。ホンダは四輪の収益改善を急ぐ必要がある」と語る。
トヨタは25年には全車種で電動車を展開、ホンダも30年をめどに世界販売の3分の2を電動車にする目標を掲げるなど、各社も電動車シフトを進めている。ただ、日興アセットマネジメントのチーフストラテジスト、神山直樹氏は「日本車メーカーにEV専業の成長ストーリーのような夢と希望がないのでPER(株価収益率)も相対的に低くなりやすい」と指摘する。
テスラの昨年の世界販売は<7211.T>36万7500台で、来年中に生産能力を年100万台に引き上げる方針。実現すれば、現在100万台規模のマツダ<7261.T>、SUBARU<7270.T>、三菱自動車<7211.T>と肩を並べる。
(白木真紀 取材協力:杉山健太郎 編集:平田紀之)
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