最新記事

自動車

独り勝ちのテスラ株 時価総額で日本の自動車メーカー上場9社合計を抜く

2020年9月7日(月)18時03分

「テスラのビジネスモデルは大手自動車メーカーとは根本的に違う。それが株価を大きく押し上げている」と指摘するのはSBI証券の遠藤功治企業調査部長だ。車両購入後に無線でソフトウエアをアップグレードして性能を高めて顧客に課金するほか、CO2(二酸化炭素)排出量ゼロのEV特化を活かし、単独では環境規制をクリアできず罰金を迫られる競合他社にクレジット(排出枠)を売って利益を得てもいる。

販売手法も評価されている。コロナ禍によるロックダウン(都市封鎖)中は人々が外出できず、店舗販売中心の自動車メーカーは売上げを大きく落とした。一方のテスラは昨年からネット販売を本格化。「今までは考えられなかった『車をワンクリックで買う』という世界を実現しており、成長期待を後押ししている」(別の国内証券)という。

成長ストーリー見えない日本車メーカー

もっとも、日本車メーカーがテスラに倣えば市場からの評価・期待が高まるかというと、必ずしもそうではないようだ。EVの採算性はまだ低く、米中摩擦を踏まえると中国市場への深入りはリスクとの見方もある。販売店網の見直しもすぐには難しい。

調査会社TIWの高田悟シニアアナリストは「トヨタはバッテリーなどの技術を磨き、売れて儲かる電動車をつくらなければならない。日産はまず縮小均衡を図らないと評価されない。ホンダは四輪の収益改善を急ぐ必要がある」と語る。

トヨタは25年には全車種で電動車を展開、ホンダも30年をめどに世界販売の3分の2を電動車にする目標を掲げるなど、各社も電動車シフトを進めている。ただ、日興アセットマネジメントのチーフストラテジスト、神山直樹氏は「日本車メーカーにEV専業の成長ストーリーのような夢と希望がないのでPER(株価収益率)も相対的に低くなりやすい」と指摘する。

テスラの昨年の世界販売は<7211.T>36万7500台で、来年中に生産能力を年100万台に引き上げる方針。実現すれば、現在100万台規模のマツダ<7261.T>、SUBARU<7270.T>、三菱自動車<7211.T>と肩を並べる。

(白木真紀 取材協力:杉山健太郎 編集:平田紀之)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


【話題の記事】
・ロシア開発のコロナワクチン「スプートニクV」、ウイルスの有害な変異促す危険性
・巨大クルーズ船の密室で横行するレイプ
・コロナ感染大国アメリカでマスクなしの密着パーティー、警察も手出しできず

・ハチに舌を刺された男性、自分の舌で窒息死


20200915issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

9月15日号(9月8日発売)は「米大統領選2020:トランプの勝算 バイデンの誤算」特集。勝敗を分けるポイントは何か。コロナ、BLM、浮動票......でトランプの再選確率を探る。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

独クリスマス市襲撃、容疑者に反イスラム言動 難民対

ワールド

シリア暫定政府、国防相に元反体制派司令官を任命 外

ワールド

アングル:肥満症治療薬、他の疾患治療の契機に 米で

ビジネス

日鉄、ホワイトハウスが「不当な影響力」と米当局に書
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:アサド政権崩壊
特集:アサド政権崩壊
2024年12月24日号(12/17発売)

アサドの独裁国家があっけなく瓦解。新体制のシリアを世界は楽観視できるのか

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 2
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 3
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 5
    トランプ、ウクライナ支援継続で「戦況逆転」の可能…
  • 6
    「私が主役!」と、他人を見下すような態度に批判殺…
  • 7
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 8
    「オメガ3脂肪酸」と「葉物野菜」で腸内環境を改善..…
  • 9
    「スニーカー時代」にハイヒールを擁護するのは「オ…
  • 10
    「たったの10分間でもいい」ランニングをムリなく継続…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──ゼレンスキー
  • 3
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 4
    村上春樹、「ぼく」の自分探しの旅は終着点に到達し…
  • 5
    おやつをやめずに食生活を改善できる?...和田秀樹医…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    【クイズ】アメリカにとって最大の貿易相手はどこの…
  • 8
    「どんなゲームよりも熾烈」...ロシアの火炎放射器「…
  • 9
    【駐日ジョージア大使・特別寄稿】ジョージアでは今、…
  • 10
    ウクライナ「ATACMS」攻撃を受けたロシア国内の航空…
  • 1
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が明らかにした現実
  • 2
    ロシア兵「そそくさとシリア脱出」...ロシアのプレゼンス維持はもはや困難か?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    半年で約486万人の旅人「遊女の数は1000人」にも達し…
  • 5
    ロシア軍は戦死した北朝鮮兵の「顔を焼いている」──…
  • 6
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命を…
  • 7
    「炭水化物の制限」は健康に問題ないですか?...和田…
  • 8
    ミサイル落下、大爆発の衝撃シーン...ロシアの自走式…
  • 9
    コーヒーを飲むと腸内細菌が育つ...なにを飲み食いす…
  • 10
    2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中