アベノミクス突然の幕切れ 株価高揚の8年、財政再建は積み残し
GDPは政権発足前に逆戻り
財政政策運営を巡っては、当初予算案の編成時に新規国債を減額することが慣例となった。今年1月の施政方針演説でも安倍首相は「来年度(20年度当初)予算の税収は過去最高となった。8年連続での減額だ」と説明し、経済成長に伴う税収増と財政健全化の両立をめざす姿勢を崩さなかった。
ただ、年度途中の補正予算編成が常態化し、実際の発行額が確定する決算ベースでは16、18、19年度と前年度を超えた。予算編成過程でも外国為替資金特別会計(外為特会)からの繰入金といった「税外収入」に頼る場面も増え、野党からは「公債発行を減らせたというのは矛盾、粉飾だ」(国民民主党の前原誠司議員)との批判が出た。
消費税については任期中に2度引き上げた政権は初めて。ただ、2度目の増税については「リーマン危機のような重大な事態が起きない限り、予定通り引き上げる」と繰り返し説明してきたにも関わらず、2回先送りした。
財政再建はコロナ禍に伴い財政収支黒字の25年度達成目標が一層困難となり、今年7月の経済財政運営の指針(骨太方針)では財政目標の議論そのものを明記することを取りやめた。
コロナ禍の経済環境を「大恐慌以来の景気後退」と断じる国際通貨基金(IMF)は、日米などの株価上昇に対して「実体経済と乖離(かいり)し、割高感がある」と警鐘を鳴らす。
20年4―6月期は、日本の国内総生産(GDP)が実質年率マイナス27.8%(485.2兆円)と第2次政権前の水準に逆戻りし、上場企業の約3割が赤字に陥った。コロナ禍の直撃で10兆円規模の税収減も想定される。「税収の問題は今後必ず議論になる」と、経済産業省幹部の幹部は言う。
(ポリシー取材チーム 編集:久保信博)
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