日本的経営の「永遠の課題」を克服すれば、経済復活への道が開ける
SEVEN CHALLENGES FOR JAPANESE FIRMS
MACROVECTOR/ISTOCK
<日本企業が克服すべき課題、そしてその先にある日本経済の復活への道筋とは。本誌「コロナで変わる 日本的経営」特集より>
※日本的経営の7つの課題を指摘する加谷珪一氏によるコラムを2回に分けて掲載します。
【前半はこちら】コロナ危機を乗り切れる? 日本企業の成長を妨げる「7大問題」とは
5. 不十分な設備投資
一連の非効率な産業構造は生産性を引き下げ、最終的にはマクロ経済の成長鈍化という形で顕在化してくる。過去20年で日本の名目GDPは約6%しか増えていないが、GDPの2割を占める政府支出は約30%も増加するなど税金からの支出に依存する状況が続く。本来は企業の設備投資が経済を牽引し、消費を伸ばしていく必要があるが、企業の設備投資が成長に結び付いていない。
日本の輸出がGDPに占める割合はドイツと比べると圧倒的に低く、日本はもはや輸出立国ではない。だが産業構造は輸出主導型のままであり、国内需要を拡大させるための設備投資が十分に行われているとは言い難い。
国内向けの設備投資が不十分というのは企業の側にも自覚があるようで、あえて投資を絞っていると考えられる。その証拠に、実質金利の低下を通じて設備投資を増やす政策だった量的緩和策に対して企業は全く無反応であった。設備投資を有効活用するためには、産業構造の転換が不可欠であり、企業自身の体質転換が進まなければ、投資を増やすことはできない。
6. サプライチェーンの縮小
産業の合理化が進み、企業の生産性が高まると、同じ付加価値を得るために必要な労働者数が減少する。余剰となった労働力を新しい製品やサービスの生産に振り向ければGDPの絶対値を増やすことができる。
今回のコロナ危機では、各企業のサプライチェーンが寸断され、一部では物資の調達が滞るという事態が発生した。企業は拡大したサプライチェーンの縮小を検討しており、一部製品の製造を国内に回帰させる可能性がある。国内で生産するには追加の労働力が必要となり、高いコストを負担するためには消費者の購買力を増やさなければならない(つまり賃金上昇)。産業合理化による労働力の捻出と賃金上昇を実現できなければ、国内回帰は机上の空論となってしまうだろう。
7. 「異常な」住宅政策
コロナ後の社会はサプライチェーンが縮小し、全世界的に地産地消化が進むと考えられる。こうした時代において持続的な成長を実現するには、日本国内で製品やサービスを開発し、日本人自身の需要でこれらを消費するという内需型経済への転換が必須となる。
内需経済のカギを握るのは住宅の整備であり、内需経済が活発な国はほぼ例外なく住宅政策が充実している。日本はこれまで建設業界などからの強い要望もあり、新築物件の建設を最優先する政策を続けてきた。このため安価で粗悪な新築物件が大量供給され、造っては壊すという資源の浪費を繰り返す結果となった。日本は本格的な人口減少が始まっているにもかかわらず、流通する住宅の8割以上が新築物件という異常な市場環境である。
在宅勤務するビジネスパーソンが増えたことから、住環境の問題が改めて認識されているが、家の環境というのは政策でいくらでも変えることができる。内需で経済を回すためには、良質な中古住宅の流通を増やすと同時に、一生涯賃貸でも問題のないよう、都市部を中心に優良賃貸物件の整備を積極的に進める必要があるだろう。
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