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日本的経営

日本的経営の「永遠の課題」を克服すれば、経済復活への道が開ける

SEVEN CHALLENGES FOR JAPANESE FIRMS

2020年7月23日(木)11時31分
加谷珪一(本誌コラムニスト、経済評論家)

一連の課題が解決されれば、日本経済はどのような姿になるのか。組織の合理化やIT化が進めば、企業の生産性が向上するので、より少ない社員数で同じ付加価値を得られる。人員の再配置は必要だろうが、余剰となった社員が新しい製品やサービスの生産に従事することで付加価値の絶対額が増え、最終的には賃金の上昇につながる。これは実質GDPの増大を伴う賃金上昇なので、労働者の購買力を拡大させる結果となるだろう(つまり生活が豊かになる)。

企業における社員の評価も労働時間ではなく成果が基準となるので、社員が提供した職務に対して対価を支払うという、いわゆるジョブ型の組織形態へシフトする。採用された時期や採用形態によって、同じ職務でも賃金が異なるというアンフェアな状況は改善される可能性が高い。組織に忠誠を示す必要がなくなるので、強制転勤や単身赴任といった慣習も消滅するだろう。

生活にゆとりが生じ、家にいる時間も相対的に長くなるため、自分と向き合う時間や家族との時間が増える。結果として住設機器や家具、家庭用品、趣味、デジタルコンテンツといった消費が拡大し、これが新しい時代における成長の原動力となる。

もっともジョブ型の組織形態は、終身雇用、年功序列、新卒一括採用に代表される、いわゆる日本型雇用制度とは相いれない。ジョブ型の組織形態に移行するということは、日本型雇用との決別を意味していると考えるべきだろう。

一部の人は不安に思うかもしれないが、従来は一つの会社にしがみつくしか人生の選択肢がなく、こうした硬直的な制度の存在がプライベートな生活を犠牲にし、豊かな消費社会の形成を阻害してきた。一定のスキルさえ身に付ければ、自身のライフスタイルに合わせていくらでも勤務先を変えられるほうが、総合的な満足度は高いのではないだろうか。

今、日本が向かおうとしている新しい社会は、いわゆるグローバルスタンダードそのものである。日本では英語を話したり、外国で活躍することをグローバルスタンダードと見なす雰囲気があるが、それはグローバル社会のごく一面を切り取ったものにすぎない。長時間労働しなくても一定の賃金を稼ぐことができ、相応の豊かな生活を送れることこそが、本当の意味でのグローバルスタンダードであり、これは決して特別なことではないのだ。

【前半はこちら】コロナ危機を乗り切れる? 日本企業の成長を妨げる「7大問題」とは

<2020年7月28日号「コロナで変わる 日本的経営」特集より>

【関連記事】在宅勤務中に4割以上が「飲酒」と回答
【関連記事】知られざる日本のコロナ対策「成功」要因──介護施設

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2020年7月28日号(7月21日発売)は「コロナで変わる日本的経営」特集。永遠のテーマ「生産性の低さ」の原因は何か? 危機下で露呈した日本企業の成長を妨げる7大問題とは? 克服すべき課題と、その先にある復活への道筋を探る。

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