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香港米中対立再燃 香港のドルペッグ制が直面するリスク
中国が香港への国家安全法制導入を決定し、米国が反発して香港に与えてきた貿易面などの特別優遇措置の廃止手続きを始め、投資家の動揺を誘っている。写真は2011年9月、香港の街頭モニターに表示された香港ドル紙幣(2020年 ロイター/Bobby Yip)
中国が香港への国家安全法制導入を決定し、米国が反発して香港に与えてきた貿易面などの特別優遇措置の廃止手続きを始め、投資家の動揺を誘っている。香港ドルの米ドルペッグ制が、果たして今後も維持できるのかという心配も浮上してきた。このため香港政府の複数の高官からは、投資家を安心させることを狙った発言が相次いでいる。
香港のドルペッグ制と足元で起きている事態をまとめた。
制度の仕組み
香港ドルは、1米ドルに対して7.75-7.85香港ドルという狭い許容変動幅が設定されている。香港金融管理局(HKMA、事実上の中央銀行)は、このレンジ内に値動きが収まるように売買を行う。HKMAが香港ドルを買えば、需給が引き締まるとともにショートポジションのコストが高まる。売却すればその逆の現象が生じる。
ペッグ制を維持するため、香港の政策金利は米国の政策金利に連動している。香港ドルがレンジ内で上下するのは、香港と米国の市場金利に差があるからだ。香港の銀行間取引金利(HIBOR)は米国の短期金利よりも高いので、国家安全法制導入に関連した資金流出懸念が出ているにもかかわらず、香港ドルは堅調を保っている。
不安台頭の背景
米中の緊張がエスカレートした場合、米国は香港の銀行によるドルの入手を制限し、その結果としてペッグ制が幕を下ろすのではないかとの不安が出ている。
しかし、HKMAの余偉文(エディー・ユー)総裁は2日のブログで、ペッグ制は米国が香港への優遇措置供与を定めた1992年の法律よりも9年前から存在していたと指摘。「(ペッグ制は)36年間にわたってさまざまな市場ショックを乗り切り、円滑に運営されている。香港の通貨・金融システムにとって柱の1つであり、香港に対する外交政策が切り替わったからといって、決して変更されるものではない」と断言した。
香港は、香港ドル流通量の6倍に相当する4400億米ドルの準備資産を保有している。HKMAはいざとなれば、中国人民銀行(中央銀行)に米ドルを融通してもらえる、と香港の陳茂波(ポール・チャン)財政長官は今週語った。
ペッグ制が重要な理由
香港は1997年に英国から中国に返還されて以来、実体経済の面で中国本土と比べて重要度が低下した半面、金融センターとしての存在価値は高まり続けている。ペッグ制が本当に脅かされることになれば、この金融センターの地位がダメージを受けかねない。
中国政府が厳格な資本規制を敷いている中にあって、香港は中国のために海外から資金を調達する上で大事な場所の1つとなっている。世界屈指の香港株式市場は、中国本土の株式・債券市場に向かう海外投資資金の最大の玄関口の役目を果たしている。香港の外為市場も世界有数の規模を誇り、米ドルの取引高は第3位だ。
中国の富裕層も香港を当てにしており、推定1兆米ドル超という香港にある個人資産のうち、半分余りは本土から移された。
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