コロナショックに苦しむ日本の航空業界 夏が行き先占う分岐点
分岐点は今夏
野村証券の荻野氏は「まずは書き入れ時の夏までに部分的にでも運航を再開し、その先の需要が戻る見通しを立てられるかどうか」が、業績の先行きを占う上での分岐点になるとみている。
各社は手元のキャッシュ確保が喫緊の課題だが、コロナ終息後の需要拡大に備え、雇用は維持する。ANAは新人客室乗務員658人の入社時期を約1カ月先送りするほか、現役の客室乗務員約6400人を対象に毎月1人当たり3―5日程度、4月から一時帰休させる。旅客機「A380」の3号機納入も当初の4月から約半年延ばし、メンテナンス費用などを抑える。役員報酬や管理職賃金も減額する。JALも4―6月まで役員報酬10%を自主返上する。
19年4―12月期の当期利益ベースでの進捗率はANAが92%、JALが82%と順調だったが、通期業績の下振れは避けられそうにない。通期予想は、ANAが15%減の940億円(リフィニティブ集計の予測平均値790億円)、JALは同38%減の930億円(同879億円)。
コロナ禍の終息時期が見通せない中、両社とも21年3月期予想を公表できない可能性もある。市場予想はANAが796億円、JALが711億円で、さらなる減益が想定されている。
羽田空港の発着枠拡大に伴い、今年は国際線で多くの新規開設・増便も計画していたが、就航延期や運休・減便が相次ぎ、出鼻をくじかれたANAとJAL。コロナ終息までなんとか持ちこたえようとしている。
(取材協力:伊賀大記、新田裕貴、竹本能文、和田崇彦 編集:平田紀之、田中志保)