最新記事

ビジネス

全社一斉テレワーク、1カ月で見えた極意 クラウド会計サービス会社freeeが直面した課題とは

2020年4月17日(金)16時40分
中川 雅博(東洋経済 記者) *東洋経済オンラインからの転載

全社でリモートワークに移行したfreeeでは、全社員が参加するイベントを、フェイスブックの社内SNS用サービス「Workplace」上で開催。オフィスにいなくとも、社員同士のコミュニケーションが活発になるような取り組みを続けている(写真:freee)

<政府は4月7日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて緊急事態宣言を発令、不要不急の外出自粛が強く要請されている。その結果、多くの企業はテレワーク(在宅勤務)の必要性に迫られている。在宅でも会社と同じように仕事を進められるのか。セキュリティをどう確保するのか。また、自宅のネット環境はリモートワークを進めるうえで十分なのか、など課題は山積みだ。
そんな中、3月2日からいち早く全社員を在宅勤務としたのが、2019年末に東証マザーズ市場に上場したクラウド会計ソフトを手がけるfreee(フリー)だ。同社では社員500人以上が一気にテレワークに移行し、1カ月が経過した。
同社の佐々木大輔CEOに、テレワークに移行して蓄積したノウハウや見えてきた課題を聞いた>

テレワーク移行の障害をどう乗り越えたか

──全社でテレワークに移行するまでにどのような検討を進めたのですか。

もともとはBCP(事業継続計画)として、例えば地震で本社ビルが倒壊するとか、水没するなどしてオフィスが使えなくても、自社のサービスを継続できる体制を考えていた。テレワークは一部で導入していたが、(会社としては)チームワークでイノベーションを生み出していくことを重視し、一体感を大事にしていたので、基本的には会社に来て仕事をしていた。

ただ新型コロナの感染拡大を受けて、1月から(本格的な)テレワークの検討を始めた。ウイルス感染の懸念の強い人が家族にいる社員など、まずは一部で始めた。2月の学校休校要請のタイミングで、会社として人の接触を減らすことに協力すべきと考えた。当初は原則在宅と言っていたが、3月2日から本社全体を閉鎖し、出社は許可制としたので、これは「出社禁止」だと後から気づいた。

検討を進めて感じたのが、今回の事態はBCPで想定していたものとは大きく異なるということ。災害時は需要も細り、ビジネスもフル稼働ではない。一方でこの2月、3月はfreeeのユーザーの多くを占める個人事業主の確定申告のまっただ中。リモート体制でサービスを継続していくことは非常に重要だった。

newsweek_20200417_105408.png

リモートワーク移行後のfreee社内のビデオ会議の様子(写真:freee)

──テレワークに移行する上での障害は何だったのですか。

まず調査を始めたのが、全員がテレワークになったときにVPN(仮想専用線、社員のみがアクセス可能なネットワーク)などのセキュリティの収容能力があるのかということ。社員だけでなく、業務委託などの人たちも含めて耐えられるのかどうか。これは別の用途に使われていた機材を活用することで、特段投資を増やさずに対応できた。

そもそも自宅にインターネット環境がない人もいる。家にパソコン用のモニターがないと生産性が下がるという懸念もあった。そこでモニターやヘッドセット、ポケットWi-Fiのレンタル費用を会社で負担することにした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中国防相会談、米の責任で実現せず 台湾政策が要因

ワールド

ロシア新型ミサイル攻撃、「重大な激化」 世界は対応

ビジネス

米国株式市場=上昇、ダウ・S&P1週間ぶり高値 エ

ビジネス

NY外為市場=ドル1年超ぶり高値、ビットコイン10
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:超解説 トランプ2.0
特集:超解説 トランプ2.0
2024年11月26日号(11/19発売)

電光石火の閣僚人事で世界に先制パンチ。第2次トランプ政権で次に起きること

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人はホームレスをどう見ているのか? ルポに対する中国人と日本人の反応が違う
  • 2
    Netflix「打ち切り病」の闇...効率が命、ファンの熱が抜け落ちたサービスの行く末は?
  • 3
    「1年後の体力がまったく変わる」日常生活を自然に筋トレに変える7つのヒント
  • 4
    【ヨルダン王室】生後3カ月のイマン王女、早くもサッ…
  • 5
    NewJeans生みの親ミン・ヒジン、インスタフォローをす…
  • 6
    元幼稚園教諭の女性兵士がロシアの巡航ミサイル「Kh-…
  • 7
    ウクライナ軍、ロシア領内の兵器庫攻撃に「ATACMSを…
  • 8
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 9
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 10
    若者を追い込む少子化社会、日本・韓国で強まる閉塞感
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査を受けたら...衝撃的な結果に「謎が解けた」
  • 3
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り捨てる」しかない理由
  • 4
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 5
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 6
    アインシュタイン理論にズレ? 宇宙膨張が示す新たな…
  • 7
    沖縄ではマーガリンを「バター」と呼び、味噌汁はも…
  • 8
    クルスク州の戦場はロシア兵の「肉挽き機」に...ロシ…
  • 9
    メーガン妃が「輝きを失った瞬間」が話題に...その時…
  • 10
    中国富裕層の日本移住が増える訳......日本の医療制…
  • 1
    朝食で老化が早まる可能性...研究者が「超加工食品」に警鐘【最新研究】
  • 2
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参加で「ネットの自由」を得た兵士が見ていた動画とは?
  • 3
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 4
    朝鮮戦争に従軍のアメリカ人が写した「75年前の韓国…
  • 5
    自分は「純粋な韓国人」と信じていた女性が、DNA検査…
  • 6
    北朝鮮兵が味方のロシア兵に発砲して2人死亡!? ウク…
  • 7
    「会見拒否」で自滅する松本人志を吉本興業が「切り…
  • 8
    足跡が見つかることさえ珍しい...「超希少」だが「大…
  • 9
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 10
    ロシア陣地で大胆攻撃、集中砲火にも屈せず...M2ブラ…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中