最新記事

日本経済

東京封鎖を警戒する金融市場 「安倍首相の最大級対策でも不十分」の声

2020年3月30日(月)18時07分

安倍晋三首相が過去最大級の経済政策策定を打ち出したにもかかわらず、株安が止まらない。写真は26日、都内で撮影(2020年 ロイター/Issei Kato)

安倍晋三首相が過去最大級の経済政策策定を打ち出したにもかかわらず、株安が止まらない。都市封鎖によって経済に甚大な影響が出れば、現対策で大丈夫だとは言えない、と警戒されているためだ。ドル不足の緩和で円高が進んでいることも日本株にとっては懸念材料となっている。

封鎖で経済対策の効果減衰

週明け30日の日経平均は一時800円を超える下落となった。前週末27日に、特段の材料もなく724円上昇した反動や、市場推計で約180円の配当権利落ちを考慮しなければならないが、景気対策への期待感は今のところ盛り上がっていない。

市場が警戒感を強めているのは、都市封鎖(ロックダウン)だ。「都市が封鎖されてしまえば国民に現金給付されたとしても、十分使うことはできない。企業への給付も急激な売り上げの減少をカバーできるか分からなくなる」(外資系証券)との声は多い。

都市封鎖が株価の大きな重しとなることは、過去最大となる2兆ドルの景気対策が決まった米国でも株安が進んでいることが示している。規模としてはGDP(国内総生産)の約10%に相当するが、都市封鎖が長引けば、それで十分かは分からないためだ。

米国の新規失業保険申請件数(21日終了週)は328万件。リーマン・ショック当時の66万件などをはるかに超え過去最大。三井住友銀行のチーフ・マーケット・エコノミスト、森谷亨氏の試算では、失業率で2%、GDPでは46%減に相当する。 米セントルイス地区連銀のブラード総裁が言及したGDP半減の可能性が現実味を帯びる。

「企業業績の先行きが極めて不透明になっている。株価のフェアバリューがどこかわからず、割安かどうかの判断もできないため、買いが入りにくくなくなっている」と、森谷氏は指摘する。

景気対策効果は0.7%との試算も

JPモルガン証券では、新型コロナウイルスの影響に鑑み、日本の経済成長率を下方修正した。第1・四半期をマイナス3.0%からマイナス4.0%、第2・四半期をマイナス1.0%からマイナス7.0%に引き下げた。

ただ、この予想は4月に学校が再開され、5月にはイベントなども徐々に再開することが前提。日本で感染拡大が食い止められずに、大都市がロックダウンされることになれば、第1・四半期で10─15%、第2・四半期で22─25%のマイナス成長と予測する欧米並みの急激な経済収縮も覚悟しなければならないとしている。

「政府や日銀が企業の資金繰りなどに対して対策を講じていることなどは評価できる。しかし、都市封鎖となれば、消費は蒸発してしまいかねない」と、JPモルガン証券のチーフエコノミスト、鵜飼博史氏は警戒する。

リーマン・ショック時、2009年4月に策定された景気対策の規模は56.8兆円。これを超えるとすれば60兆円規模が想定される。

しかし、昨年12月に成立した景気対策26兆円が含まれているとすれば、追加となる景気対策の規模は34兆円程度。「2020年度補正予算が10兆円程度であれば景気対策によるGDP押し上げ効果は0.7%ポイント程度にすぎない」と鵜飼氏はみる。2桁が想定されるGDPの落ち込みをカバーするには力不足だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

IT大手決算や雇用統計などに注目=今週の米株式市場

ワールド

バンクーバーで祭りの群衆に車突っ込む、複数の死傷者

ワールド

イラン、米国との核協議継続へ 外相「極めて慎重」

ワールド

プーチン氏、ウクライナと前提条件なしで交渉の用意 
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
特集:独占取材 カンボジア国際詐欺
2025年4月29日号(4/22発売)

タイ・ミャンマーでの大摘発を経て焦点はカンボジアへ。政府と癒着した犯罪の巣窟に日本人の影

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは? いずれ中国共産党を脅かす可能性も
  • 3
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口の中」を公開した女性、命を救ったものとは?
  • 4
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 5
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 6
    ロシア武器庫が爆発、巨大な火の玉が吹き上がる...ロ…
  • 7
    足の爪に発見した「異変」、実は「癌」だった...怪我…
  • 8
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 1
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    「スケールが違う」天の川にそっくりな銀河、宇宙初期に発見される
  • 4
    【クイズ】「地球の肺」と呼ばれる場所はどこ?
  • 5
    「生はちみつ」と「純粋はちみつ」は何が違うのか?.…
  • 6
    女性職員を毎日「ランチに誘う」...90歳の男性ボラン…
  • 7
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 8
    教皇死去を喜ぶトランプ派議員「神の手が悪を打ち負…
  • 9
    自宅の天井から「謎の物体」が...「これは何?」と投…
  • 10
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった...糖尿病を予防し、がんと闘う効果にも期待が
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 7
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 8
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 9
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 10
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中