国内株を2年連続で上回ったJリート市場のバリュエーションは?──2019年は21%上昇

株価が上がり出すと資金は株式市場に集まり、リート(REIT)は一見不利に見えるが Nerthuz-iStock.
<堅調だったJリート市場だが、ここへきて頭打ちの感がある。Jリートは割高か割安か、いま一度確認する>
*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2020年1月7日付)からの転載です。
2019年のJリート(不動産投資信託)市場を振り返ると、市場全体の値動きを表わす東証REIT指数(配当除き)は21%上昇し、TOPIX(東証株価指数)の騰落率を2年連続で上回りました(図表1)。また、銘柄数は3社増えて64社、市場時価総額は前年比27%増加の16.4兆円となり、Jリート市場の産みの親である不動産業セクターの規模を初めて上回りました。2001年9月にスタートしたJリート市場を人間に例えるならば、「18歳となってお父さんお母さんの背丈を少し超えた」といったところでしょうか。
このように年間でみると上昇基調で推移したJリート市場ですが、11月以降やや頭打ちの感がみられます。米中貿易摩擦に対する楽観見通しや米国での金融緩和期待の後退を受けて「株高・金利上昇」が進行するなか、株式及び債券の代替投資先としてJリート市場に向かっていた資金フローが反転し、市場の先行きに不透明感が台頭しています。
それでは、現在のJリート市場のバリュエーションはどうなっているのか、いま一度確認したいと思います。
図表2は、現在の市場ファンダメンタルズ「1口当たり予想分配金、1口当たりNAV(Net Asset Value:解散価値)、10年国債利回り」をベースに計算した、東証REIT指数の「分配金利回り」、「イールドスプレッド(分配金利回りと10年国債利回りとの差)」、「NAV倍率」を示しています。
まず、2019年12月末現在のイールドスプレッドは3.6%で過去平均(3.4%)と比較して割安な水準(騰落率+5%)にあります。次に、NAV倍率は1.21xで過去平均(1.16x)と比較して割高な水準(騰落率▲4%)にあります。このようにしてみると、現在のバリュエーションは概ね妥当な水準にあると言えそうです。なお、東証REIT指数が昨年の最高値(2,257)まで上昇した場合、イールドスプレッドは3.4%(=過去平均)、NAV倍率は1.27xとなります。また、東証REIT指数が昨年の最安値(1,751)まで下落した場合、イールドスプレッドは4.4%、NAV倍率は0.99x(=NAV)となります。