最新記事

欧州

欧州中央銀行、ラガルド新総裁就任 ユーロ圏の内需拡大要請「金融政策で経済支援」

2019年11月23日(土)12時10分

欧州中央銀行(ECB)のラガルド新総裁は22日、ユーロ圏が域外経済の低迷に対抗するには、公共投資の拡大を通じた対応を含めて内需を強化する必要があるとの見解を示した(2019年 ロイター/Ralph Orlowski)

欧州中央銀行(ECB)のラガルド新総裁は22日、ユーロ圏が域外経済の低迷に対抗するには、公共投資の拡大を通じた対応を含めて内需を強化する必要があるとの見解を示した。

ECBとして今後も「経済を支援し将来のリスクに対応する」一方で、緩和的な金融政策の「副作用」を監視すると改めて表明した。

ラガルド総裁は、中央銀行として今後も景気支援で役割を果たすと述べる一方、世界的な貿易摩擦により、ドイツを筆頭とした輸出主導の成長は突如終了したとして、ユーロ圏各国政府に内需強化を促した。

公共投資の重要性を指摘し、欧州全般でデジタル化と環境保護に資金を投じる必要性を強調した。

「投資のニーズは各国で異なるが、より生産的で、よりデジタル化と環境に重点を置いた共通の未来に向け、横断的な投資を考えるべき」と述べた。

前任者のドラギ氏は、ドイツなど黒字国に大規模な財政支出と投資を求めていたが、聞き入れられることはなかった。

また、ドラギ氏は主要な講演でECBの次の動きを示唆することが多かったが、今回ラガルド総裁はこれを踏襲しなかった。

INGのエコノミスト、カルステン・ブルゼスキ氏は「ラガルド氏は、早期にECB改革に着手するよりも、欧州の経済・政治のトップご意見番になれるという期待に応えた」と述べた。

ラガルド氏は、金融政策について、ECBの政策枠組みの見直しに「近く」着手すると確認。また、緩和策の副作用を注視しつつ、必要な流動性を供給する方針を示した。

「金融政策は引き続き経済を支援し、物価安定という責務にのっとり将来のリスクに対応していく」と述べた。

こうした発言で、ラガルド氏は、自らの位置を北部欧州の「タカ派」と南部欧州の「ハト派」のほぼ中間に置いたといえる。

ピクテ・ウェルス・マネジメントのストラテジスト、フレデリック・デュクロゼト氏は、ラガルド氏について、同氏にとって初となる12月の理事会の後は、発言に具体性を持つことが求められると指摘したうえで「現段階で各種データはECBが政策スタンスを変更しなければならないほど弱くない」と述べた。



[フランクフルト 22日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191126issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月26日号(11月19日発売)は「プラスチック・クライシス」特集。プラスチックごみは海に流出し、魚や海鳥を傷つけ、最後に人類自身と経済を蝕む。「冤罪説」を唱えるプラ業界、先進諸国のごみを拒否する東南アジア......。今すぐ私たちがすべきこととは。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米副大統領、グリーンランド訪問 「デンマークの保護

ビジネス

米ミシガン大消費者調査、5年先インフレ予想4.1%

ワールド

米関税に「断固たる対抗措置」、中国国営TVが短文サ

ビジネス

米2月PCE価格+2.5%、予想と一致 スタグフレ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
特集:まだ世界が知らない 小さなSDGs
2025年4月 1日号(3/25発売)

トランプの「逆風」をはね返す企業の努力が地球を救う

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 2
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジェールからも追放される中国人
  • 3
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中国・河南省で見つかった「異常な」埋葬文化
  • 4
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 5
    なぜANAは、手荷物カウンターの待ち時間を最大50分か…
  • 6
    アルコール依存症を克服して「人生がカラフルなこと…
  • 7
    不屈のウクライナ、失ったクルスクの代わりにベルゴ…
  • 8
    突然の痛風、原因は「贅沢」とは無縁の生活だった...…
  • 9
    最悪失明...目の健康を脅かす「2型糖尿病」が若い世…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 2
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 3
    「低炭水化物ダイエット」で豆類はNG...体重が増えない「よい炭水化物」とは?
  • 4
    「テスラ離れ」止まらず...「放火」続発のなか、手放…
  • 5
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 6
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 7
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大…
  • 8
    大谷登場でざわつく報道陣...山本由伸の会見で大谷翔…
  • 9
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 10
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 3
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 4
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛…
  • 5
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 6
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 7
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 8
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中