最新記事

ビジネス

米企業、輸入規制強化後にCEOの報酬が大幅増加 ただし業績は変わらず

2019年11月6日(水)16時51分

米企業の最高経営責任者(CEO)の報酬は、海外の競合企業の製品に対する輸入規制が強化されると大幅に増加することが、直近に公表された研究論文で明らかになった。写真はカーネギー図書館。5月9日、ワシントンで撮影(2019年 ロイター/Clodagh Kilcoyne)

米企業の最高経営責任者(CEO)の報酬は、海外の競合企業の製品に対する輸入規制が強化されると大幅に増加することが、直近に公表された研究論文で明らかになった。

この論文は、米ミシシッピ州立大学のブライアン・ブランク助教授が執筆。1994年から2015年の間に米国の1000社超の企業の役員報酬(直接報酬と奨励金の両方)について、ダンピング防止税や相殺関税が導入される前と後で比較した。その結果、CEOの報酬は、こうした措置が導入された後に平均で17%上昇した。

トランプ米大統領が、中国などの貿易相手国との通商摩擦で発動している追加関税の影響ではなく、ダンピング防止税や相殺関税が調査対象となっている。

CEOの昇給の多くは株式やオプションの追加という形で行われていたが、輸入規制導入後は、給与や賞与も増えていた。

ブランク氏は、報酬の増加が企業の業績改善と結びついていると予想していたという。結局のところ、ダンピング防止税などは、不当に安く輸入された商品から国内産業を守るため賦課される関税で、それに伴う業績改善で企業幹部が高い報酬を受けるのは理にかなっているかもしれない。

ただ、ブランク氏はロイターとのインタビューで「ただ、これらの企業の業績が改善したという証拠は見つからなかった」と述べた。

同氏の理論によると、保護貿易といった目立った勝利を手にした結果、企業のCEOは社内でより力を増す。「報酬の決定権がある取締役会も含め、企業はこれを肯定的なことと受け止め、それに対してCEOに報酬を与えるのかもしれない」との見方を示した。

ブランク氏は、関税ではなく反ダンピングや相殺関税に焦点を当てたのは、企業への影響が大きいためだと説明。ダンピング防止税と相殺関税は、平均して関税より8倍大きいと指摘する。

「関税は、ダンピング防止税や相殺関税ほど広く使われていない」と述べ、「(ダンピング防止税や相殺関税の)規模は、少なくとも現政権までは、関税よりはるかに大きかった」と説明した。

ブランク氏の論文は今週、バージニア州のジョージ・メイソン大学から発表された。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191112issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

11月12日号(11月6日発売)は「危ないIoT」特集。おもちゃがハッキングされる!? 室温調整器が盗聴される!? 自動車が暴走する!? ネットにつなげて外から操作できる便利なスマート家電。そのセキュリティーはここまで脆弱だった。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トランプ氏のロシア産原油関税警告、市場の反応は限定

ビジネス

日経平均は反発で寄り付く、突っ込み警戒感生じ幅広く

ワールド

イスラエルが人質解放・停戦延長を提案、ガザ南部で本

ワールド

米、国際水域で深海採掘へ大統領令検討か 国連迂回で
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:引きこもるアメリカ
特集:引きこもるアメリカ
2025年4月 8日号(4/ 1発売)

トランプ外交で見捨てられ、ロシアの攻撃リスクにさらされるヨーロッパは日本にとって他人事なのか?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる唯一の方法
  • 2
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者が警鐘【最新研究】
  • 3
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 4
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 5
    磯遊びでは「注意が必要」...6歳の少年が「思わぬ生…
  • 6
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
  • 7
    3500年前の粘土板の「くさび形文字」を解読...「意外…
  • 8
    8日の予定が286日間に...「長すぎた宇宙旅行」から2…
  • 9
    メーガン妃のパスタ料理が賛否両論...「イタリアのお…
  • 10
    なぜ「猛毒の魚」を大量に...アメリカ先住民がトゲの…
  • 1
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き詰った「時代遅れ企業」の行く末は?【アニメで解説】
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?
  • 3
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山ダムから有毒の水が流出...惨状伝える映像
  • 4
    【独占】テスラ株急落で大口投資家が本誌に激白「取…
  • 5
    800年前のペルーのミイラに刻まれた精緻すぎるタトゥ…
  • 6
    ロシア空軍基地へのドローン攻撃で、ウクライナが「…
  • 7
    ガムから有害物質が体内に取り込まれている...研究者…
  • 8
    一体なぜ、子供の遺骨に「肉を削がれた痕」が?...中…
  • 9
    「この巨大な線は何の影?」飛行機の窓から撮影され…
  • 10
    現地人は下層労働者、給料も7分の1以下...友好国ニジ…
  • 1
    中国戦闘機が「ほぼ垂直に墜落」する衝撃の瞬間...大爆発する機体の「背後」に映っていたのは?
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    「さようなら、テスラ...」オーナーが次々に「売り飛ばす」理由とは?
  • 4
    「一夜にして死の川に」 ザンビアで、中国所有の鉱山…
  • 5
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 6
    「今まで食べた中で1番おいしいステーキ...」ドジャ…
  • 7
    市販薬が一部の「がんの転移」を防ぐ可能性【最新研…
  • 8
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 9
    テスラの没落が止まらない...株価は暴落、業績も行き…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中