最新記事

米中貿易戦争

米中、通商協議で農産物や為替など部分合意 トランプ、対中関税見送り

2019年10月12日(土)07時20分

米中両政府は2日目の閣僚級通商協議を終了した。ブルームバーグは関係筋の情報として、米中が部分的合意に達したと報じた。両国は今回の部分合意を下地に年内に包括的な通商合意の締結につなげたい考えという。写真は2016年6月、北京で(2019年 ロイター/Damir Sagolj)

トランプ米大統領は11日、米中が「第1段階」の通商合意に達したと発表し、前日から2日間の日程で行われていた両国の閣僚級通商協議が部分合意に達したことを明らかにした。

今回の「第1段階」では中国による米農産品の大規模購入のほか、一部の知的財産権、為替、金融サービスの問題などについて合意。さらに米国は15日に予定していた対中制裁関税引き上げを見送る。

トランプ大統領は中国の劉鶴副首相との会談後、両国が基本合意し、貿易戦争の終結に近づいていると言明。今回の合意の文書化には最長5週間の時間を要する見通しで、チリで11月に開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で中国の習近平国家主席と署名する可能性があると述べた。

今回の合意は両国にとって素晴らしいとし、とりわけ為替問題を巡る合意は多大な恩恵をもたらすとの認識を示した。一部の知的財産権や技術移転を巡る問題については進展があったものの、「第2段階」でさらに踏み込む必要があるとした。

第1段階の合意に署名後、第2段階の交渉を開始し、その後「第3段階」の合意が続く可能性があると述べた。

ムニューシン米財務長官は、金融サービスについてはほぼ全面的な合意を得られたほか、為替相場の透明性向上についても合意したと語った。中国に対する為替操作国の認定を撤回するかどうかについては、今後精査するとした。

また、今回の合意内容が文書化されるまで「米国は署名しない」とも述べた。

ムニューシン長官は、15日に予定されていた対中関税引き上げの延期を確認したものの、ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は、12月に発動される予定の対中関税については何ら決定されていないと述べた。

ライトハイザー代表はまた、今回の合意では中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)の問題には触れていないことを明らかにした。

劉副首相は、米中経済関係の良好化に向け大きな進展があったと評価し、今後も取り組みを継続すると述べた。

トランプ大統領は今回の合意が今後数週間で白紙に戻るとは考えていないとしつつも、可能性はあるとした。

政敵の野党民主党ジョー・バイデン前副大統領については議題に挙げなかったものの、香港情勢を巡っては協議したことを明らかにした。

また、今回の合意に関わらず、米連邦準備理事会(FRB)は利下げを継続すべきとの見方を再表明した。

*情報を追加しました。

[ワシントン 11日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191015issue_cover200.jpg
※10月15日号(10月8日発売)は、「嫌韓の心理学」特集。日本で「嫌韓(けんかん)」がよりありふれた光景になりつつあるが、なぜ、いつから、どんな人が韓国を嫌いになったのか? 「韓国ヘイト」を叫ぶ人たちの心の中を、社会心理学とメディア空間の両面から解き明かそうと試みました。執筆:荻上チキ・高 史明/石戸 諭/古谷経衡


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米ブラックストーン、トランプ大統領の通商政策支持

ワールド

30日間停戦、より広範な和平計画策定を可能に=ウク

ビジネス

カナダが報復関税、298億カナダドル相当の米輸入品

ビジネス

カナダ中銀0.25%利下げ、トランプ関税で「新たな
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
特集:日本人が知らない 世界の考古学ニュース33
2025年3月18日号(3/11発売)

3Dマッピング、レーダー探査......新しい技術が人類の深部を見せてくれる時代が来た

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 2
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「腸の不調」の原因とは?
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    株価下落、政権幹部不和......いきなり吹き始めたト…
  • 5
    【クイズ】ウランよりも安全...次世代原子炉に期待の…
  • 6
    トランプ第2期政権は支離滅裂で同盟国に無礼で中国の…
  • 7
    113年間、科学者とネコ好きを悩ませた「茶トラ猫の謎…
  • 8
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 9
    SF映画みたいだけど「大迷惑」...スペースXの宇宙船…
  • 10
    「トランプの資産も安全ではない」トランプが所有す…
  • 1
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやステータスではなく「負債」?
  • 2
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦している市場」とは
  • 3
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は中国、2位はメキシコ、意外な3位は?
  • 4
    メーガン妃が「菓子袋を詰め替える」衝撃映像が話題…
  • 5
    うなり声をあげ、牙をむいて威嚇する犬...その「相手…
  • 6
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアで…
  • 7
    「これがロシア人への復讐だ...」ウクライナ軍がHIMA…
  • 8
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」…
  • 9
    白米のほうが玄米よりも健康的だった...「毒素」と「…
  • 10
    「コメが消えた」の大間違い...「買い占め」ではない…
  • 1
    テスラ離れが急加速...世界中のオーナーが「見限る」ワケ
  • 2
    「テスラ時代」の崩壊...欧州でシェア壊滅、アジアでも販売不振の納得理由
  • 3
    口から入ったマイクロプラスチックの行く先は「脳」だった?...高濃度で含まれる「食べ物」に注意【最新研究】
  • 4
    テスラ失墜...再販価値暴落、下取り拒否...もはやス…
  • 5
    「健康寿命」を延ばすのは「少食」と「皮下脂肪」だ…
  • 6
    がん細胞が正常に戻る「分子スイッチ」が発見される…
  • 7
    戦場に「北朝鮮兵はもういない」とロシア国営テレビ.…
  • 8
    人気も販売台数も凋落...クールなEVテスラ「オワコン…
  • 9
    テスラ販売急減の衝撃...国別に見た「最も苦戦してい…
  • 10
    【クイズ】アメリカを貿易赤字にしている国...1位は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中