最新記事

不動産

不動産王トランプの「買収案」に揺れるグリーンランド 地元は投資に期待も

2019年8月29日(木)14時50分

トランプ米大統領が購入に意欲を示したことから世界中の注目の的になっているグリーンランドは、これを機に投資が増加するのではないかと期待している。写真はホワイトハウスで21日撮影(2019年 ロイター/Tasos Katopodis)

トランプ米大統領が購入に意欲を示したことから世界中の注目の的になっているグリーンランドは、これを機に投資が増加するのではないかと期待している。

グリーンランドの海運会社ロイヤル・アークティック・ラインのハメケン最高経営責任者(CEO)は「グリーランドのような地域で投資が刺激されると、鉱業や環境、インフラに魔法のような出来事が起こりうる」と話す。

トランプ大統領によるデンマーク領グリーンランドの購入構想は今月に入って浮上。トランプ氏は9月上旬にデンマークを訪問してグリーランド首脳とも会談する予定だったが、デンマークのフレデリクセン首相がグリーランド購入構想に不快感を示したことから、トランプ氏は先週、デンマーク訪問を取りやめると発表した。

ロイヤル・アークティック・ラインのハメケンCEOは、米国からの投資増に期待感を示す。同CEOによると、グリーランドでは17の町と民生用国際空港との間に道路がないという。CEOは「米国が世界の一部地域への関心をかき立てると、米国の民間企業からの投資が増えることが、過去の事例からも明らかだ」と述べた。

火種は基地問題

グリーンランドには米軍基地があり、弾道ミサイル早期警戒システムのレーダーも設置。米国にとって軍事的にも重要性が高い。

米国はグリーンランド北西部チューレに空軍基地を持っているが、1951年にデンマークと結んだ条約により、賃料は支払っていない。

グリーランドは長らく、米軍基地からより多くの見返りを得たいと望んできた。ただ、米軍は2014年、米軍基地に40年以上にわたってサービスを提供してきたグリーンランド・コントラクターズとの契約を解除。さらに2017年には、基地への資材輸送の委託企業に、グリーンランドのロイヤル・アークティック・ラインではなく米国の企業を選定したことから、地元から不満の声が噴出した。

グリーンランドの外交担当当局者は今週、ロイターのインタビューで「米軍のプレゼンスから最大限に利益を得たいと思うのは当然。われわれは領土で防衛協力に便宜を図っているのだから」とコメントした。

関係の冷え込みを背景に、グリーンランドとデンマーク、米国が毎年開催していた合同委員会は2014年以降、凍結されている。

[コペンハーゲン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20250121issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年1月21日号(1月15日発売)は「トランプ新政権ガイド」特集。1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響を読む


※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ停戦が発効、人質名簿巡る混乱で遅延 15カ月に

ワールド

韓国尹大統領に逮捕状発付、現職初 支持者らが裁判所

ワールド

アングル:もう賄賂は払わない、アサド政権崩壊で夢と

ワールド

アングル:政治的権利に目覚めるアフリカの若者、デジ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ新政権ガイド
特集:トランプ新政権ガイド
2025年1月21日号(1/15発売)

1月20日の就任式を目前に「爆弾」を連続投下。トランプ新政権の外交・内政と日本経済への影響は?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性客が「気味が悪い」...男性の反撃に「完璧な対処」の声
  • 2
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼いでいるプロゲーマーが語る「eスポーツのリアル」
  • 3
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べている」のは、どの地域に住む人?
  • 4
    「搭乗券を見せてください」飛行機に侵入した「まさ…
  • 5
    感染症に強い食事法とは?...食物繊維と腸の関係が明…
  • 6
    女性クリエイター「1日に100人と寝る」チャレンジが…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 9
    フランス、ドイツ、韓国、イギリス......世界の政治…
  • 10
    本当に残念...『イカゲーム』シーズン2に「出てこな…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 3
    睡眠時間60分の差で、脳の老化速度は2倍! カギは「最初の90分」...快眠の「7つのコツ」とは?
  • 4
    「拷問に近いことも...」獲得賞金は10億円、最も稼い…
  • 5
    メーガン妃のNetflix新番組「ウィズ・ラブ、メーガン…
  • 6
    【クイズ】世界で1番マイクロプラスチックを「食べて…
  • 7
    北朝鮮兵が「下品なビデオ」を見ている...ロシア軍参…
  • 8
    轟音に次ぐ轟音...ロシア国内の化学工場を夜間に襲う…
  • 9
    失礼すぎる!「1人ディズニー」を楽しむ男性に、女性…
  • 10
    【クイズ】次のうち、和製英語「ではない」のはどれ…
  • 1
    ティーバッグから有害物質が放出されている...研究者が警告【最新研究】
  • 2
    大腸がんの原因になる食品とは?...がん治療に革命をもたらす可能性も【最新研究】
  • 3
    体の筋肉量が落ちにくくなる3つの条件は?...和田秀樹医師に聞く「老けない」最強の食事法
  • 4
    夜空を切り裂いた「爆発の閃光」...「ロシア北方艦隊…
  • 5
    インスタント食品が招く「静かな健康危機」...研究が…
  • 6
    TBS日曜劇場が描かなかった坑夫生活...東京ドーム1.3…
  • 7
    「涙止まらん...」トリミングの結果、何の動物か分か…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    「戦死証明書」を渡され...ロシアで戦死した北朝鮮兵…
  • 10
    「腹の底から笑った!」ママの「アダルト」なクリス…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中