アマゾンが支配する自動化社会というディストピア
REPLACEABLE YOU
ここでの「ゴミ」は人間の犯す過失のこと。しかし、ロボットは実に正確だ。特に反復的なルーティン業務が得意。リシンク・ロボティクス社の単腕型産業用ロボットのSawyerを見れば、どれほど多くの作業をこなせるか分かるだろう。
「競争優位」の幻想が崩れる
Sawyerは見た目も人間らしい。スクリーンにアニメーションの顔が出るし、足の位置にタイヤが付いている。サルのような感じの腕をつかんで動きを教えると、反復的な動きを学んで仕事を片付けてくれる。
人間とほとんど同じくらい素早くモノを感知し、滑らかに動く。従来の産業用ロボットは高給取りのプログラマーがコードを書く必要があったが、Sawyerなら誰でも5分以内でプログラムできる。開発者のロドニー・ブルックスの試算によると、Sawyerの稼働コストは時給4ドルに満たない。
雇用の将来にはロボットが大きな影を及ぼすが、議論は間違った予測に左右されているようだ。自動化で労働者が仕事を奪われることはないと、最近まで多くの経済学者が考えていた。
労働者は機械に適した作業からは離れるが、経済学が説く「比較優位」の原則によって、多くの分野で優位を保つと考えられていた。この論理によると、私たちはテクノロジーによってお払い箱にされるのではなく、より危険の少ない、よりやりがいのある仕事に就く──つまり人間らしく生きる自由を得るはずだ。
全米高速道路輸送安全局(NHTSA)は16年に、自動運転車のソフトウェアを「運転者」として扱い始めた。全国のタクシー、トラック、バス、ウーバーなどの職業運転者合計410万人は解雇予告を告げられたようなものだ。理論的には、彼らは運転の仕事から解放され、ほかの仕事に就ける。例えばアマゾンの倉庫の仕事だとか。しかし倉庫もどんどん自動化されていく。経済学者が「半熟練労働者」と呼ぶ人たちの大多数が働いていた職場はどこもそうだ。
彼らこそがアメリカの中流階級を支えてきた人たちだ。あなたが娘の結婚式で着るスーツを作ったときに寸法を測ってくれた気の利くデパート店員、結婚式前のディナーのために丁寧に肉を切ってくれた気前のいい肉屋、新婚旅行の計画を手伝ってくれた旅行代理店の人もそうだ。
もちろん、人間の労働者は疲れたり機嫌が悪くなったり、気を散らしたりする。とんでもないミスも犯す。機械は正確だし、偏見を持たない。しかも大量のデータを蓄積できる。
グーグルはアメリカだけでも毎分360万件の検索を実行している。スパム業者は毎分1億件のメールを送り、スナップチャットは毎分52万7000枚の写真を送信し、ウェザー・チャンネルは毎分1800万件もの天気予報を提供する。これらのデータを集め、体系化し、分析すれば、ほとんどあらゆる高次元のタスクに応用できる。