トランプと習近平、貿易戦争を止める気配無し 次なる切り札は?
米中貿易戦争の激化は、両国が相手から譲歩を引き出そうと圧力を強め合うなか、関税措置の応酬を越えた領域に突入している。写真は米中のし紙幣と国旗。5月撮影(2019年 ロイター/Jason Lee)
米中貿易戦争の激化は、両国が相手から譲歩を引き出そうと圧力を強め合うなか、関税措置の応酬を越えた領域に突入している。
トランプ米大統領が中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)との取引を原則禁じる制裁措置を打ち出し、米国がほぼ全ての中国製品に関税措置を拡大したことを受け、中国政府は報復措置を講じると宣言している。
中国国営メディアは、貿易戦争の次の一手として、レアアース(希土類)の輸出規制を使う可能性があると警告。米国は、人工衛星から電気自動車のバッテリーまで、多くのハイテク製品に必要なレアアースの供給を中国に頼っている。
米中双方が今後取り得る手段を検証した。
中国が取り得る措置
●関税の引き上げ
中国は、現在も報復関税を課していない100億ドル(1兆800億円)相当の米製品に、関税を課すことができる。
中国政府は昨年12月に米国車に対する関税の一部を撤回しているが、それを再度課税することもできる。
中国はまた、大豆などの一部米製品の関税率を25%からさらに引き上げることができる。貿易戦争が激化するまで、中国は米国産大豆の最大の輸入国だったが、これを機に輸入はほとんど止まってしまった。
再度関税率が引き上げられれば、中国の大豆輸入業者は2018年と同様、ブラジルなどからの調達を増やすことになり、米国の農家に打撃となるだろう。これは、2016年の米大統領選でトランプ氏勝利に貢献した農業層を狙った関税といえる。
半導体やその製造装置など、ハイテク製品に対する関税が引き上げられる可能性は低い。代替の供給国を探すのは中国にとって難しいからだ。
中国はこれまでのところ、米国からの輸入品として最も高価な航空機大手ボーイングの旅客機は関税対象にしていない。中国の航空会社は、増大する需要に応えようと拡大を急いでおり、ボーイング機に関税を課せば、国内旅客業の発展を遅らせる可能性がある。
中国が、ボーイングの代わりに欧州のエアバスから調達を増やす可能性はある。客室内の通路が1本の国産狭胴型ジェット旅客機「C919」が完成するまでの間、欧州への依存が数年に渡って高まることになる。