自動車に続いて航空機にも電動化の波 CO2排出削減の切り札になるか?
空飛ぶバッテリー
シャープな横顔で、翼の両端にプロペラを搭載するアリスは、一から電気飛行機としてデザインしたと、エビエーションのオマー・バー・ヨヘイ最高経営責任者(CEO)は語る。
「端的に説明すると、巨大なバッテリーの側面に飛行機の絵を描いたということ」
伝統的なメーカーも、電気飛行機への関心も高めている。エンジンメーカーのロールスロイスは18日、アリスにモーターを供給している独シーメンスの航空宇宙部門を買収したと発表した。
エンジニアたちは、ハイブリッド飛行機により大きな希望を見いだしている。軽量化、小型化したジェットエンジンと、離陸時と上昇時に電気の力を使うハイブリッドは、燃料を30%節約できる。また、スラスターと電動プロペラで安定性が高まり、より流線形のフォルムにできることが可能で、空気抵抗を減らして燃料消費を軽減する。
エアショーの討論会に登壇した米ユナイテッド・テクノロジーズのポール・エレメンコ最高技術責任者(CTO)は、「そうなれば、経済性・持続可能性はこれまでの飛行機よりもバスのそれに近づくだろう」と語った。
金融大手のUBSは、環境に優しい航空機技術(グリーン・アビエーション)の需要は2040年までに1780億ドルになると予測している。
エアバスは次世代旅客機にハイブリッド技術を検討しているが、2030年代までに座席数200のハイブリッド飛行機がA320に取って代わる可能性は低い。
航空産業のCO2排出は世界全体の2.5%ほどだが、特にアジアで中間層が台頭していることにより、増加が予測されている。
業界ではハイブリッド機などが主流になるまでの対策として、航空会社が排出枠を購入し、オフセットするCORSIAプログラムの導入を始めている。
解決は遠い未来か
航空産業の成長を阻害せず、CO2排出量を2005年比で半減するのは簡単ではない。
ボーイングのグレッグ・ヒスロップCTOは、「われわれは、どうやってそれが成し遂げられるのかまだ分からない」と語る。
業界の首脳たちにとって、答えが「フライト数の削減」でないことだけは確かだ。
ロールスロイスのポール・スタインCTOは、「航空産業を成長させ、かつ持続可能にしなければならない」、「移動を減らすことを提案する人もいるが、それでは先の見通しが真っ暗だ」と、討論会で発言した。
ブリュッセルを拠点とする業界団体「エアラインズ・フォー・ヨーロッパ」は、「航空業界への課税は解決にならない」との声明を発表。一方、環境保護団体グリーンピースで交通や輸送の問題に取り組むサラ・ファイヨル氏は、課税や規制は必要だと主張する。
「環境と気候の非常事態に直面しているときに、数十年先に実現するかどうか分からない技術的解決策を待っているわけにはいかない」
(翻訳:宗えりか、編集:久保信博)
[ル・ブルジェ ロイター]
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