日産・西川社長・CEO続投は取締役の意志確認せず? 深まるルノーとの溝
5月20日、日産自動車が17日に公表した新経営体制では、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)の続投が決まった。しかし、ここにいたるまでには多くの曲折があったもようだ。写真は日産自動車のロゴ。ジュネーブで3月に撮影(2019年 ロイター/Pierre Albouy)
日産自動車が17日に公表した新経営体制では、西川広人社長兼最高経営責任者(CEO)の続投が決まった。しかし、ここにいたるまでには多くの曲折があったもようだ。経営統合に否定的な西川社長のトップ交代を求めていた仏ルノーと日産の間の溝は、さらに深まった可能性がある。
「全会一致」で西川社長続投
ルノーに対する、すげない拒絶――。「西川社長続投」という日産側の出した方針について、日産・ルノー両社の関係者らはこう受け止めている。
ルノー側からみれば、なんとも「不条理」(ルノー関係者)な結果で、不満がくすぶっている。日産に配慮した友好的な経営統合案を持ちかけているにもかかわらず、統合に反対している西川社長がトップに居座り続ける決定を日産が下したからだ。
一方、日産側としては「ルノーには経営統合を拒む日産の意思表示と受け止めてもらって構わない」(日産幹部)と強気な姿勢だ。
取締役候補の選出を含む今回の人事案は「暫定指名・報酬諮問委員会」が検討を重ね、17日に発表された。
西川社長続投を巡っては、委員長を務めた社外取締役の井原慶子氏が同日、報道陣に対して議論の経緯を説明した。
カルロス・ゴーン前会長の不正の看過、完成検査不正、業績不振に対する西川社長の責任を問う声があったものの議論を尽くした結果、経営の安定性・継続性を考慮し、最終的に取締役会で「全会一致」で決まったと説明した。
しかし、すでに日産取締役に就いているルノーのジャンドミニク・スナール会長に近い関係筋は、全会一致という言葉に眉をひそめる。
全会一致であろうとなかろうと、西川社長の続投の是非を問う「投票」はなかったと話し、結論を導く過程で取締役一人ひとりの明確な意思確認がなされていない可能性をうかがわせた。
日産とルノーから2人ずつ、社外取締役7人
新たな取締役候補は11人。日産からは西川社長、16日付で最高執行責任者(COO)に就いた山内康裕氏、2014年から監査役を務める元みずほ信託銀行副社長の永井素夫氏の3人。
一方、ルノーからはスナール会長に加え、ティエリー・ボロレCEOという経営トップ2人が顔をそろえる。
日産とルノー両社の提携に関するルールを定めた協定の中には「日産の取締役は日産出身者をルノー出身者より1人多くする」という取り決めがあるが、社外取締役扱いの永井氏を除けば、両社から2人ずつとなる。
井原氏によれば、ボロレCEOについて、ルノーから「アライアンス強化」を理由に推薦があった。取締役候補の1人、日本ミシュランタイヤ会長で前在日フランス商工会議所会頭のベルナール・デルマス氏もルノーからの推薦で、日本への理解が深いことなどが評価されているという。同氏はスナール会長と同じミシュラングループの出身だ。
井原氏は、ボロレ、デルマス両氏の選出にあたっては「利益相反がないか、日産の自律性が阻害されないか、企業価値の毀損はないか」などを十分に検討して問題ないと判断したと説明した。
別の日産幹部は「ボロレ氏の『入閣』が決まるまでには、かなり時間がかかった」と話している。「事業面での連携は今でもそれなりにやっているのに、なぜ経営統合という形にこだわるのか」と首をかしげ、デルマス氏の考えは推し量れないが、ルノーとルノーに15%出資するフランス政府の意向が「日産の経営にも色濃く出るのでは」と警戒を強める。